この夜を止めてよ JIN ページ25
「愛してる」
眠る間際のあなたから出たその言葉に私の心は悲鳴をあげる
愛してるっていうジンの言葉はさよならよりもずっと哀しい
これ以上何も言わなくていい
だからこの夜を止めてよ
日曜の深夜 渋谷
前の2日間が嘘みたいに静かになったその場所で
呼吸するみたいにさも当たり前かのように
わたしたちは出会った
何度かふたりで夜を過ごして朝にはキスをして別れる
次の約束なんてしたこともなかった
そんな日々の中で何回も傷ついて、きっと何回も傷つけてこの痛みこそがわたしたちの愛なんだって疑わずに信じてきた
「愛してる」
「愛してるよ」
ベットの中でなぜか声をひそめながら、ふたりだけの秘密をひとつずつ増やすたび
バイバイってキスするあなたにつくり笑い、心で泣いてる
「いつかこの関係に名前がつけばいいね」
なんて笑って言うあなたはいつだって残酷で、だってわたしあなたの名前しか知らないの
おなじ色の夢をみていたいのにちがう道に離れてく
ふとあなたの名前を検索した
SNSが出てくるだろうか、ってそんな軽い気持ちだったのに
ああ、有名人だったんだね
違う世界の人だったんだね
出会いの時を選べないのなら
せめて、この夜を止めてよ
それでもあなたは部屋に来る
大きな背中を見つめていられたらそれでよかったのに
「なんで泣いてるの」
気づかないうちに零れていた涙に驚いた顔をしたジンは少し困ったように笑う
そんなジンの頭に手を回してキスをすれば彼はもう何も言わなかった
なんで泣いてしまったんだろう
どんなに激しくあなたを愛しても答えはみえない
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作者名：うた | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/p/deepblue
作成日時：2018年2月23日 12時
