魔術にかかった操り人形の人質たち (ページ33)

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第30話:小さなコンサートbyみんしぃページ33

「ゲール将軍、指示を！」
「宿敵、メア・リーを倒すのだ！サラ、右側につけ。ルミは左だ！」
「了解ですです！」

「ただいま、アゼル、あなたの読みたい本を…わあああああっ！？」
足元に張られた糸に足をかけ、体制を崩したメアリーをダレンが支えた。

そこには大笑いしている3人がいた。
メアリーの中で感情がグツグツと沸騰していたが、ダレンがなだめて落ち着かせた。

冷静になったメアリーにルミが不思議そうな顔で言った。
「なんか最近、おばさん怒らなくなったね」
おばさんという言葉に反抗したくなるのをぐっとこらえた。
「言葉も優しくなったよな」

おばさんがいい人になったのは何故だろう会議を始めた3人を放っておいて、
メアリーはアゼルに本を渡した。

アゼルは読書家だ。
生前、彼は学校で本をずっと読んでいたという。
当然、知識は豊富である。そして、学力は学校の中で上位にいたらしい。
一般庶民の子とは思えない。

人当たりも良く、柔らかいイメージを持つ彼はさぞ人気のあったことだろう。

「いつもありがとう。
この本はどこから持って来ているの？」

「2階にある書斎よ。ここの部屋と同じくらいの広さね」

メアリーアゼルが会話をしているところに双子が駆け寄ってきた。
ゲールが部屋の外に出て何をしているのか気になるのだ。

7人でパイプオルガンのある部屋に向かうと、そこではゲールが1人演奏をしていた。
ゲールの演奏は初めて聴いた。腕が人間より短い為、使える鍵盤は少ないが、なかなか良い演奏をしていた。
「ゲール君の演奏はいつ聴いてもきれいね。
人間の大きさだともっといいのだけど」

ゲールの本気の演奏を聴きたいという気持ちはみんな同じだったようだ。
メアリーはゲールに魔術を使い、一時的なものだが、16歳の人間の大きさにした。

「あなたにとっての最高の演奏をしてちょうだい」

ゲールは輝く笑顔で、任せとけと言った。

8人だけの小さな観客、少年である弾き手。

それは本当に小さな小さな演奏会だった。