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『…、え？』
購買かどこかで何か買う程度のことを想像していたから、突然の、デート、という単語のあまりの語感の強さに混乱してしまって、何も言えないでいる、と。
「何も奢らなくていいんで、デート」
ジェシーくんは追い打ちをかけるようにもう一度、同じ言葉を繰り返した。あまりにたくさん同じ言葉ばかり聞いたから、ゲシュタルト崩壊が起こっちゃってる。デート、って何だったっけ。
『…あ、あぁ、遊びに行くってこと？』
最近は友達同士でもふたりで出かけるとデートって言ったりするらしいから、そういうことかもしれないと思って、何気なく聞き返してみるも。
「いや、デートです」
……撃沈。なにそれ、どういうつもりなの。
目的の部屋に着いて段ボールを置くと、改めて私に向き直るジェシーくん。いつも楽しげに笑っているその顔は、今日は、どことなく緊張しているようで。
「…俺、センパイのこと好きなんで」
展開が急すぎて、頭がついてきてくれない。
どういう意味の、と口に出す前に、分かっていたかのように、恋愛的な意味で、と言うジェシーくん。
「俺のこと、ただの後輩としか思ってないでしょ」
『…まあ』
「でもこうやって言ったら、意識してくれるでしょ」
『…』
「…しない？」
『…まあ、…するよね』
「ほら！」
……いや、ほら！ じゃないし。
後輩にいいように翻弄させられているようで、ほんのちょっとだけ癪だったけれど。こんな風に真っ直ぐ好意を伝えられてしまったら、ジェシーくんの思惑通り、もう、意識しないでいられる訳がなかった。
「センパイ、俺のこと、好きになってください」
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作者名：春野菜
| 作成日時：2020年9月13日 18時
