（赤）センパイ ページ6
〇 高校の後輩と先輩
〜〜〜
担任に、気に入られているのか、嫌われているのか、なんなのか。素行は悪くないはずだから、せめて前者だと思いたいけど、何かにつけて雑用を頼まれるものだからどちらにしろ嬉しくない、面倒くさい。
( …重い、無理、次こそは無視する )
もしかして顔が暇そうに見えるのかな、と思ってから、暇そうな顔って何だよ、とひとりで勝手に担任へのフラストレーションを募らせている、と。
「あれ、Aセンパイ？」
『、…あぁ、ジェシーくんか』
「何してるんすか、それ」
『担任に押し付けられたの』
「AHAHA！ ツイてないっすね」
委員会が同じで知り合った、後輩のジェシーくん。
仕事が数回一緒になっただけの私にも、廊下やなんかで遭遇すれば、こんなにフレンドリーに話しかけてきてくれる、私が今まで出会った人の中で、いちばんのコミュ力お化け、と言っても過言ではないと思う。
「どこ持ってくんすか、これ」
『え、待って待って』
「重そうだったし、俺、今ヒマなんで」
『……じゃあ、ありがとう』
それから徹底したレディーファースト精神の持ち主で、いつもこんな風に、当たり前のように助けてくれる。もしかしなくても、めちゃくちゃモテるやつ。
私が必死になって運んでいた教材入りの段ボールを、軽々持ち上げて歩くジェシーくん。頼もしい、とありがたく思う反面、やっぱり申し訳なくて。
『…今度なんか奢るね？』
「え、いいっすよ、そんな」
『だめ、私の気が済まないから』
「えぇ、…」
『…なんでもいいよ？』
「…なんでも？」
『うん、高すぎなければ』
「……じゃあ、」
飲み物でも買おうかと思ったけど、あいにくそういう好みは何ひとつ分からないから、希望を聞いてみる。
遠慮しながらもしばらく考えていたジェシーくんが、ようやく、意を決したように口を開いた。
「…俺と、デートしてください」
〜〜〜
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作者名：春野菜
| 作成日時：2020年9月13日 18時
