What color do you like? (ページ25)

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（青）君の匂いページ25

〇アイドルと一般人

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『ねえ、それってどんな味するの？』

樹くんはいつも、私の目の前では煙草は吸わない。

私の家に居る時はわざわざベランダに出て
吸い終わってからもちょっと時間を置いたりもする。

「…んー？どれ？」

『たばこ』

「まずいよ、苦いし」

『え、じゃあ何で吸うの？』

「止めらんなくなってんの」

寂しいからここで吸ってもいいよって言っても
絶対やだって頑なに私と距離を取ろうとしてくる。

もちろんそれが樹くんの優しさだっていうことは
ちゃんと分かってるつもりではいるんだけど。

『…私も吸ってみたい』

「え、ダメ」

『え、なんで？』

「体に悪いから」

『…樹くんは吸ってるのに』

「俺はだってAと出会う前から吸ってるし」

『…』

「その顔は何？どういう気持ち？」

私が拗ねたみたいな顔をして見せたら
樹くんは笑って頭を撫でてきた。

こういう時、樹くんはよく私を子供扱いする。

煙草の匂いは本当はちょっと苦手だったから
それもあって樹くんは気を遣ってくれてるみたい。

でも、樹くんの匂いなら全然嫌じゃない。

樹くんからふわっと香ってくる煙草の匂いは
いつの間にか私にとって安心出来る匂いになってた。

これを言ったら多分怒られるから言わないけど。

もし樹くんとお別れしなきゃいけない日が来たら
私はきっと、この匂いをずっと引きずるんだと思う。

『…私もこの匂いになりたい』

「え、なりたい？」

『…だって、樹くんの匂いだもん』

「…それは…俺の匂いで我慢してよ」

『…』

「A？」

私が何を考えてるかなんてきっとお見通しで
樹くんは後ろから私を抱きしめてくれた。

「俺より先に死なれたら困るし」

『…やだ、私が先だもん』

「だめ」

『や、…』

もう一回やだって言おうとしたんだけど
それより先に樹くんに唇をキスで塞がれた。

樹くんの唇は優しくて、苦かった。

〜〜〜

当たり前にずっと一緒にいるつもりの樹くんと
来るかもしれない別れにずっと怯えてる彼女ちゃん