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北斗の慌てた声と共に部屋の電気がついて、眩しくてぎゅっと目を閉じたせいで、また涙が溢れた。
「…A、ごめん、俺、何かした？」
お互いベッドの上に正座して、向かい合って。
傍から見たらさぞおかしな光景なんだろうな、なんて思いながら、改めて、目の前の北斗の顔を見ながら、否定の意を込めて首を横に振る。
「じゃあ、どうしてそんなに泣いてんの」
涙腺が馬鹿になったみたいで、止まらない涙。
ここまで来ると一周回って面白くなってきて、泣きながらも少し笑うと、今度は笑ってるし、と北斗まで困ったように、それでいておかしそうに笑う。
北斗の指が何度も何度も私の頬を撫でると、冷たく濡れる感触と、北斗の手の温かさが伝わってくる。
『北斗が、手、出してくれないから、…っ』
正直にそう言えば、北斗はぎょっとしたように目を見開いて、それから大きなため息をついた。
呆れられたかな、と思ったら、勢いよく抱きしめられて。途端に北斗の匂いでいっぱいになって、苦しいような幸せなような、ぐちゃぐちゃな気持ちになった。
「…女の子がそんなこと言うんじゃありません」
『じゃあ、…言わせないでよ』
「うん、その通りだ、ごめん」
ひとしきり泣いたこともあって、安心する北斗の匂いと体温に包まれたら、じわじわと眠たくなっていくような、心地良い感覚に頭を支配される。
「俺だってそういうこと、したいけどさ」
『…うん』
「最近ずっと仕事頑張ってて疲れてるだろうし」
『……北斗だって忙しいでしょ？』
「ほら俺は忙しい方が調子良いから」
『……まあ、そうだけど』
「顔色も良くなかったから、休んで欲しくて」
頭を撫でる手も、耳元で話す声も、北斗から与えられる何もかもが優しくて。北斗が私を大切にしてくれようとするのが、ひしひしと伝わってきて。
……私、北斗のこういうところが好きなんだった。
『ほくと、』
「ん？」
『…ごめんね？』
「…、俺も、不安にさせてごめん」
『……うん』
「A、もう眠いんでしょ」
『……ん』
北斗が小さく笑う声と、再び電気を消すリモコンの音を聞きながら。背中を撫でる優しい手を感じながら。緩やかに、深く、眠りに落ちていった。
「…おやすみ、A」
：
( お楽しみはまた今度、ね )
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作者名：春野菜
| 作成日時：2020年9月13日 18時
