What color do you like? (ページ15)

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（黒）すれ違いページ15

〇アイドルと一般人

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「A、…A？」

『……ん、？』

目を開けると、カーテンの隙間から漏れる陽の光と、準備万端で私の顔を覗き込む恋人___北斗の姿。

「おはよ、ごめんね起こして」

『……んーん、だいじょぶ』

「仕事、行ってくるね」

『……あれ、もうそんな、じかん、？』

「今日遅くなるから」

『…ん、…いってらっしゃい』

「行ってきます、おやすみ」

『…おやすみ、』

北斗は、眠くて頭がぼうっとしたままの私の額を撫で、微笑んで、そのまま静かに寝室を出ていった。

その光景を眺めながら、やっぱりアイドルなんだな、なんて、もう何回目かも分からない感想が浮かぶ。

それから再び泥のように眠って、ようやく目が覚めたのは、昼時すら過ぎて、おやつの時間になるところ。

もうひと眠り出来そうだったけれど、お腹が空いていたから、ベッドから抜け出して。彼が作っておいてくれたらしい、朝食だったものをレンジで温める。

と、目に付いたのは、反射して映る私の顔。

『……酷い格好』

人前に出る仕事をしているだけあって、どれだけ朝が早くてもいつもばっちり決まっている彼と、小説家という仕事柄ほぼ自宅に引きこもっている、寝癖でぼさぼさの髪の毛、徹夜明けでぼろぼろな顔の、私。

あまりにも釣り合わない、と思わざるを得ない。

締め切りに追われると途端に、料理も洗濯も掃除も出来なくなるから、北斗だってきっとものすごく忙しいのに、どれも任せっきりにしてしまっていて。

こんな私のどこが良くて一緒に居てくれるんだろう、もしかしたらもうとっくの昔に愛想を尽かされているかもしれない、と不安にならない訳がなかった。

『…流石に、捨てられちゃうな』

私たちは、夫婦じゃない。同棲はしているけれど、ただの恋人で、離れようと思えばいつでも離れられるような、弱い繋がりでしかない。

最近はお互い忙しくて顔すらまともに合わせていなかったし、北斗は最近毎日のように帰りが遅いし。

ようやく夢だった仕事に就けたのだから、ひとつひとつの文章、文字に至るまで、丁寧にしたい、妥協なんて出来るはずがない。満足いく作品に仕上げるためなら何だってしたい、…けど。

『…今日は、起きて、待ってようかな』

その仕事もようやくひと段落したんだから、たまには恋人らしいことがしたい、と思った。

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