・ ページ13
〜〜〜
その日は、朝から何もかも上手くいかなかった。
まず、人生で初めてというくらいの大寝坊をして。さらに定期が鞄の中で行方不明になったせいで、払わなくていい切符代を無駄に払うことになって。
会社に到着したのが始業ギリギリの時間だから、いつもの日課のカフェにも、もちろん行けず。
仕事でも凡ミスばかりして、上司にも怒られるどころか、むしろ心配されてしまって。もういいから今日は早く帰りなさい、と宥められる始末。
流石に落ち込んで、足取りも重く歩いて。真っ直ぐ帰ってひとりきりになるのがなんとなく嫌で、気づけば、いつものあのカフェに向かっていた。
『…、まだ開いてるんだ』
今まで朝にしか来たことがなかったし、時間的に駄目元だったけど、どうやら割と遅くまでやっているお店らしく、看板には明かりが灯っていて。
「…あれ、いらっしゃいませ」
いつもと違う時間だからか謎に緊張してしまったけれど、いつも通りのドアベルの音と、私を見て微笑んでくれた店長さんの顔を見て、ようやく心が安らいだ。
「テイクアウトですか？」
『いえ、今日は店内で』
「ありがとうございます、…珍しいですね？」
『たまにはゆっくり過ごしてみたくて』
席に案内してもらってから、ほんの少しだけ交わした会話。なんとなく散々だった今日のことは隠しておきたくて、見栄を張って誤魔化した、のに。
「お待たせしました」
『…、え』
「もし良かったら食べて下さい」
『そんな、悪いです』
「今日はお疲れのように見えたので
…、少しでも元気を出して頂けたら、なんて」
カフェラテと一緒に運ばれてきたのは、いつもショーケースに並んでいるのを目にしていて、美味しそうだと思っていた、お店のおすすめらしいチーズケーキ。
お節介だったらすみません、と眉を下げて笑う彼。
『あの、店長さん』
「…？ はい」
『お名前を伺ってもいいですか』
「…え？」
〜〜〜
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 477人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春野菜
| 作成日時：2020年9月13日 18時
