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「…陽菜と何かあった？」
慎ちゃんは、きっと陽菜ちゃんからも何も聞いてないから、今朝の出来事は知らない。けど、なんとなく察してはいるんだと思う。
『……もうちょっと、オブラートに包むとか』
「俺そういうの駄目なんだって、知ってんだろ」
『…うん、そこが慎ちゃんのいいところだもんね』
「そ、直球勝負一本！」
慎ちゃんの真っ直ぐさは、昔からいつだって私を助けてくれた。陽菜ちゃんにもそんなところがあって、２人はどこか似ている、といつも思う。
どっちがどっちに似てるのかは分からない。長く一緒にいると似てくるって本当かな、でもそれなら私だって似るはずだよね、なんて考えてみたり。
「…だって珍しいじゃん、２人が喧嘩なんて」
『……喧嘩っていうか、』
「え、違うの？」
『…私が、陽菜ちゃんにひどいことしちゃって』
さっき、陽菜ちゃんが別の子たちと楽しそうに話しながら教室を出て行くのを見た時。自分がまいた種とはいえ、どうしようもなく悲しくなった。
『でも、これは、全部私のせいだから
…私が自分でなんとかしないと、いけないから』
慎ちゃんはしばらく黙って私の話を聞いてくれていたけれど、ふと真剣な表情になって、話し出す。
「…A、昔は、俺たちのこと怖がっててさ」
『…うん、？』
「ほら、全然心開いてくれなかったじゃん」
『……そう、だっけ』
「だから、初めてAが俺に、俺たちに
頼ってきてくれた時、すげぇ嬉しかったよ」
『…覚えてない』
「うん、でも俺は覚えてるし、
…きっと陽菜も同じような気持ちだったはず」
話を聞きながら、いつしか足が止まっていた。
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作者名：春野菜
| 作成日時：2020年7月23日 20時
