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１人には慣れてる。陽菜ちゃんと慎ちゃんさえ居てくれれば新しい友達なんて作らなくていい。そう言いながら本当は、季節が変わり、新しい出会いの気配が近づくと、やっぱり期待してしまう自分がいた。
だからこそ今年、高校生になるこのタイミングで、いよいよピアノを辞めようと思っていた。結局は勇気が出なくて、日数を減らしてもらうだけに留めているけれど。とにかく、過去に囚われるのをやめて、誰とでも仲良く出来るような明るい子になりたかった。
そのことはまだ２人にさえ言えていない。だって、ピアノは私のアイデンティティだっただから。陽菜ちゃんも慎ちゃんも、私のピアノが好きだと言ってくれるから。２人が私から離れていく日が来るのが、１人になるのが、本当は、ものすごく怖いから。
「Aちゃん、おはよ」
『…あ、樹くん、おはよう』
「昨日はありがと、楽しかったね」
『ううん、こちらこそ、…すごく楽しかった』
「…」
『…ん？』
「ううん、あのさ」
『…うん』
「今度は、２人で遊ぼうよ」
え、と驚いて顔を上げる。目が合うと、にやりと片方の口角を上げていたずらっ子のように笑う樹くん。
「Aちゃん、やっとこっち見たね？」
そう言われて、ようやくはっとする。わざわざ挨拶をしてくれて、話しかけてくれていたのに、私はずっと俯いたままで。
『…ごめんなさい、ぼーっとしてて』
「んーん、それより、２人でデート、どう？」
『……デート』
「嫌だったら、普通に遊びに行くんでもいいけど」
『え、それ何が違うの…？』
「そりゃあ、気持ちの持ちようとか？」
『…っあ、はは、なにそれ』
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作者名：春野菜
| 作成日時：2020年7月23日 20時
