cafe au lait (ページ23)

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『本当はもっといろんな人と仲良くなりたいのに、うまく話せなくて、そうしたら、勝手に近寄り難いって思われて、壁が出来ちゃって』

『勉強も、ピアノも、…昔は何でも出来そうって言われてたから、そうなろうって、何でも頑張ってたけど、…今は全部中途半端だし、…』

どうして樹くんに、どうしてこんなに自分のことを話してしまっているんだろう。陽菜ちゃんにも、慎ちゃんにも、まだ誰にも言えてなかったことなのに。頭の隅の方にいるまだ冷静な私が問いかける。

『みんなとも、せっかく仲良くなれたのに、結局どう思われてるかばっかり気にしちゃって、陽菜ちゃんみたいに友達らしく接せられなくて』

『陽菜ちゃんも慎ちゃんも私のこと、弱くて、何にも出来ない子だと思ってる、…もちろん、自分がその立ち位置に甘えてただけで、２人は悪くない、…でも』

きっと、いつもお喋りな樹くんが何も言わないから。ただ聞いていてくれるからだ。

きっと、陽菜ちゃんや慎ちゃんは距離が近すぎて、却って言い出せなかったんだ。

小さい頃の私が、両親に話せなかった悩みを何故かピアノの先生には言えた、あの時の気持ちに少し似ている気がする。話しながら、頭の隅の方にいる私が勝手に納得する。

『もう、こんな自分が、…いやだ』

話しているうちに泣きそうになって、でも絶対に泣きたくなくて、ぐっと奥歯を噛み締める。樹くんはそれに気づいているのか、顔を見ないでいてくれる。

『……もう、いい子でいたくない』

そこまで言うと樹くんは、僅かに中身が残っていたグラスを傾けて一気に空にして、再び私の目を真っ直ぐ見ると、片眉を上げて笑ってみせた。

「…じゃあ、いい子、やめちゃおっか？」

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