７３話 ページ29
菜々花said
「楯野先輩聞いてくださーい！桜哉先輩とお話出来ましたっ！」
うん、ずっと見てたから知ってるよ。
あれは話したっていうより、貴方が一方的に喋ってるだけだと思うけどね。
──とかいう心の内は隠して。
「･･････ねえ、愛ちゃん。」
「はい？」
「そろそろ、もう１回告白してみたら？」
後輩の恋を応援する良い先輩のまま、敵を蹴落とそうじゃないの。
「やっぱり先輩もそう思います!?私もそろそろ告白しようかと思ってたんです！」
お、予想以上にチョロい。説得の台詞も考えてあったけど、必要なかったみたい。
「いいと思う！愛ちゃんほんと積極的〜！」
「だって好きな人には好きだって伝えたいじゃないですか！」
とっても素敵な恋愛観だけど、それ相手の迷惑になってるの解ろうね？
「なるほど、素敵な考えだね。」
「ナナちゃーん！ペンキ塗り手伝ってー！」
「あ、モモちゃん呼んでる。──じゃ、愛ちゃん頑張って！応援してるから！」
「ありがとうございます！」
「･･････。」
大道具の階段にペンキを塗りつつ、少し離れた所にいる桜哉君に視線を向ける。
珍しく真剣な顔をして、のこぎりで木の板を切っている桜哉君。
この前の期末テストではぼんやりしてたのに、集中スイッチがどこかにあるのかな。
──あ、板の角が手に当たって痛がってる。可愛い。
「･･････なに。」
「えっ。」
何故か急に桜哉君が顔を上げるもんだから、バッチリ目が合ってしまった。
「今こっち見てただろ。」
「珍しく真剣な顔してるなーと思って。」
「で、そんな俺がカッコよくて見とれてたと。」
「ふふ、そういう事にしといてあげる！」
「･･････。」
「･･････桜哉君？」
突然、まっすぐに私を見つめだす桜哉君。
「･･････。」
私の呼びかけには応えず、ゆっくりと顔を近づけてきた。
眼鏡の奥の瞳に、驚きのあまり動けなくなった私が映っている。
「ちょ、近･･････。」
「あ、ペンキか。」
「･･････え？」
「ほっぺにペンキついてるよ。最初顔にゴキブリつけてんのかと思った。」
「･･････そんなに近づかないとわかんないって、眼鏡の度合ってないの？」
「かもな。」
まったく、この天然タラシめ･･････！
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作者名：鈴蘭姫 x他1人 | 作成日時：2017年3月19日 10時
