借金返済のためにブラック本丸を引き継ぐことにした。２【刀剣乱舞】 (ページ10)

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３７．粟田口の太刀ページ10

「いち兄……この嬢ちゃんは厚たちの手入れをやってくれたんだ。術を使えるわけでもないし、そんなに警戒するこたぁない」

「厚たちの件は私も聞いたよ、薬研。手入れをしてくれたことは藤四郎の代表として礼を言います……しかし、それとこれとは話は別。この本丸に今後審神者は必要ありませんし、手出しも無用です」

王子様。

容赦ない殺意を一身に向けられているというのに、真っ先に思い浮かんだワードはそれである。

人間離れした容姿は今更であるが、明るい緑がかった浅鮮やかな青い髪に少し渋い金色の瞳。

服装は薬研くんや厚くんと系統の近い西洋風の軍服であったが、肩にかけられたマントや煌びやかな装飾品はどこぞの王族を思わせる風格を醸し出していた。

いち兄と呼ばれた刀剣男士は本体こそ取り出してはいないが、いつでも切りつけられるぞと言わんばかりにカチャリと鞘から刃を覗かせ瞬きもせず私を睨みつけている。

「この先にあるのは厨ですが、食材に毒でも仕込むおつもりで？」

「ち、違います！今、燭台切さんが私たちの朝食を作ってくださっているので、そのお手伝いと薬研くんたちの朝食も一緒に作ろうと――」
「彼の練度が低いのを良いことに、燭台切殿も既に支配下へ納めていると。後ろにいる政府の犬は随分と手練れに見えますからね」

ああ言えばこう言う。

私がどう弁解しようとも、目の前の彼は悪意の含んだ解釈しかしないためこれ以上の発言は益にならないと判断し、他に話せるような言葉も思い浮かばず黙り込む。