借金返済のためにブラック本丸を引き継ぐことにした。２【刀剣乱舞】 (ページ2)

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２９．二日目のはじまりページ2

目の覚ますと、目の前に広がっているのは見知らぬ天井だった。

小説だとかで度々目にするこの台詞をまさか自分が言う日が来るだなんて思ってもいなかったが、私の心境を簡潔に表現するためにはこれが一番適切である。

私が寝かされていたのは、初日よりは少し広い和室。

物は何も置かれてはいないが床の間は一応ある、それなりにきちんとした空間であった。

部屋の中に時計は設置されていないため現時刻がどのくらいかは分からないが、障子の隙間から光が漏れているので朝か昼かそのくらいの時間帯なのだろう。

皴だらけになってしまった服をお気持ち程度に伸ばして、鏡で姿を確認することが出来ないため手櫛で髪を軽く整える。

色んなことが世話しなく訪れたせいか、まだ疲れはちゃんと取れていないようで頭はズキズキと痛む。

重い腰に活を入れ、外の様子を確認しようと障子を開く。

部屋の外に広がっている庭は、先日と比べると何となく空気の澱みは軽減されているように思える。

とはいえ、辺り一面に繁殖している雑草や枯れ木が本丸の全体の重苦しさに拍車をかけており、本丸はお城というよりも幽霊屋敷や廃墟と表現する方がお似合いであった。

「嬢ちゃん、身体の方はもう平気か？」

ひょこっと廊下から顔を出して私に声をかけてきたのは、昨日手入れ部屋にいた少年だった。

身体から切り傷や痣は消え、本来の美しさを取り戻している彼の姿に一瞬心臓が止まり、返事をするのに数秒ほど間が開いてしまう。

「まだちょっと身体は怠いですけど、動けるようにはなりました」

「そうか、あんまし無理すんなよ……そういえば自己紹介していなかったな。俺っちは薬研籐四郎、よろしく頼むぜ」

そう言いながらニカっと笑う彼は、見た目に反してずっと年上の印象を与えてきた。

実際、何百年も生きている付喪神なので年上なのは当たり前だが、昨日は部屋の隅に縮こまっていることもあって弟たちくらいの子どもにしか見えなかったのだ。

「あの、監査官さんはどこにいますか？」

「監査官……ああ、アイツか。確か、燭台切の旦那と一緒にゲートの様子を確認していたはずだ。案内するからついてきな」