【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

49.『難攻不落の錠前の秘密』 ページ3

慌ただしく人が動く。全員がその場から動くことを禁止され、すし詰め状態となった。

「キッドって、既にいると思いますか？」

身体チェックと金属探知を終えた愛梨が、安室のもとにやってくる。

「なんとも言えないですね。でも、海月先生が前に、この美術館には、隠し通路だとか何だとかは無いからって言ってましたから、どう逃げ、どう侵入したのかは気になりますね」

仕事柄、そういうのは気になる。護衛のためや、機密保持の為だとか。

「ですよね。うーん、キッドキラーのコナンくんに会えば、少しはヒントが降りるかもしれないのに！！何処に行ったの、コナンくん！」

拗ねる愛梨に、安室は苦笑いを浮かべた。しかし、その視線は、空っぽの箱。パズルのピースは、嵌められていなかった。


「それはそうと、沖矢。今回、"囚人"の管理に使われているケース、あれが使われているらしいぞ」

酎ハイの入ったグラスを揺らす。透明な液体が揺れる。あれとはと沖矢は尋ねる。

「ほら、お前がこんなのあったらいいのにって、エルに言ったろ」

漸く沖矢は思い出したらしい。それを本当に作ったエルは、今は大英博物館で働いている。

「実際にはそれを元にして改造したものだけどな。本当、何で錠前の代わりにパズルを、なんて考えるものかな。シャーロキアンの考える事は不思議だ」

「関係ないだろう」

そう言った沖矢に私は薄く笑う。いや、コナンをよく見てみろよ、どうしたらあらゆる人間の行動が怪しく見えるんだ？

「確か、抜け穴を作ってたよな」

沖矢は段々と思い出してきているらしい。あの時、私達の共通の友人が作った作品の内容を話している。

「あー、エルの悪い所の1つだった奴か。あれ、どうにか治んなかったのか」

むりだろという言葉に、思わず頷いてしまった。ごめんよ、エル。今はきっと、英国で忙しく働いているだろう友人に心の中で謝っておいた。


「な、これは、どういうことだ」

キッド関連を一任されている刑事の声が響く。その注意の対象は、ケースだ。

ショーケースの前面には、ガラスの表面がパズルのピースになっている。

「これは、正しく嵌められた時に、普通のガラスのように見える特殊加工なんだ」

コナンはそう言うと、抜き取ったガラスのピースを嵌める。すると、ピースの亀裂は消え、単なるケースへと変貌した。

それにどよめきが走る。それを知っていれば、安易に盗み出すことが可能になる。

では残る問題は、何処に潜んでいるか、だ。

50.『月下の奇術師と小さな名探偵の再戦』→←48.『奇術師、見事に盗み出す』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す