48.『奇術師、見事に盗み出す』 ページ2
ふと、照明が落ちた。これが合図だ。
「キッドが来た！」
そうざわつく客。慌ただしい警備員。人の波の中、安室は夜目を利かすも、揉みくちゃにされる中では、体制を保つので精一杯だ。
「非常灯をつけろ！」
慌ただしく聞こえる中で、その声から数秒の後に、明かりはついた。
「宝石が、ない！」
ショーケースの中から、宝石が消えていた。歓声が上がる。安室は、なるほどと思った。
――確かに、月下の奇術師と言われるだけある。
忽然と消えた宝石の行方を、安室はコナンと同じように考え巡らすのだった。
「浮かない顔だな」
そう言われ、私はそうかと返して、苦い液体を煽る。何時になっても、麦酒はあまり好きではない。どちらからと言うと、カクテルや酎ハイのほうが好きだし、酒も強い方ではない。
「やはり、思い出すのか？」
その言葉に、何がと返す。口に入れた塩味の砂ずりが、妙に辛い。
「お前の叔母のことだ」
そう言われ、私は眼を丸くする。だが、やや図星な気さえする。
「何だ、お前もそんなことを気にしていたのか」
笑って返せば、沖矢が笑えていないと指摘した。いつも笑えていないと思う。
「くそ、鋭い奴はもてないぞ」
苦々しく、そう言えば、沖矢は関係ないと、苦笑を漏らす。確かにそのとおりだが。
「まあ、お前の指摘は半分ほど合ってるよ」
苦い顔をしながら、麦酒を飲み下して、酎ハイを頼んだ。こっちのほうがいいわ。
「半分？」
沖矢の瞳が、薄く開く。隠されている緑色の瞳が薄っすらと見えた。
「八割でした、スイマセン」
その威圧にも似た瞳に、私は笑った。全然怖くないぞ、あ、でも、黒ずくめに向ける瞳はやめてくれ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 738人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒井蜜柑(プロフ) - 花枝さん» ありがとうございます！本当に、長らくお待たせしてすいません！週一掲載で続けていけたらいいなと思っていますので、なるべく終了まで更新停滞がないようにがんばります！ (2021年5月24日 14時) (
レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
花枝 - お待ちしておりました！おかえりなさい、これからも応援しています！ (2021年5月23日 23時) (レス) id: 43f2320b1e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - きゃろさん» すいません、長らくおまたせしました！本当に更新停滞気味が多くてすいません。なるべく早くは続きを挙げたいと思いますのでもう暫くお待ちください。 (2021年4月29日 7時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
きゃろ(プロフ) - おかえりなさいです！続きが更新されてるのが嬉しくて感想を書いてしまいました！続き楽しみにしています。 (2021年4月29日 2時) (レス) id: d6911c13cc (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 藤崎さん» 全然大丈夫です！期待に添えれるように、頑張っていきます。本当ゆっくりし過ぎですいません。 (2019年3月22日 23時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒井蜜柑 | 作者ホームページ：http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時：2019年2月14日 16時
