【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

53.『初恋は叶わないのがセオリー？』 ページ8

「ね、凄いと思いませんか！初恋の人と巡り会えるなんて」

この間遭遇したらしい事件のことを愛梨は、満足気に話している。いや、でも、普通に殺人事件に遭遇したんだよな。

「白鳥警部も、勘違いだったとして、少し辛かったんじゃないか」

その言葉に、愛梨は少し悄気げた。しかし、直ぐに気を取り戻して、安室に同意を求めた。

「そうですね。確かに、初恋の人とまた会えるなんて確率、早々ありませんからね」

そう言って、安室は何処か昔の記憶を思い出したように眼を細め。どうやら彼にも、初恋の人がいたらしい。

私？私は、向こうの世界ならいたぞ。

「そういう愛梨はどうなんだ」

私がそうたずねると、愛梨は意味深な笑みを浮かべる。

「結婚して、子供がいますね」

その言葉に、私達二人は沈黙する。此処の三人、叶った初恋が無いんじゃないのか。

「ま、いいんですけどね！今は、綾小路警部がいますから！」

そう嬉々として言う彼女。いや、愛梨、お前、軽くあしらわれてるだろ。シマリスを肩にのっけた古都の警察を思い出しながら、私は心の中でツッコんでおいた。

「安室さんは、どうですか？」

安室に話をふった愛梨。安室は少し考える素振りを見せたあと、こちらをじっと見た。

「今も、女々しく初恋の相手を追っかけてますよ」

その笑顔は、私が身おもわず震いしてしまうほど、綺麗だった。

54.『恋愛小説はNGで』→←52.『転生作家の自嘲』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す