【名探偵コナン】転生作家の心得 (ページ10)

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09.『フラグ回収お疲れ様』ページ10

知り合いに裏口を通させてもらい、名古屋の喧騒に再び足を落した。逃げよう。

「あ、海月先生じゃないですか」

見つかったかと振り返れば、そこに立っていたのは先程私を尋ねてた東野と言った作家である。同じく名古屋で降ろされた仲間ということか。

「海月先生、名古屋は初めてで？」

安室とは違う物腰の柔らかさだ。そういえば、東野といえば以前"湯川の告白"がドラマ化して一躍有名になったな。名古屋は取材で来たことがある。東野は私の隣へと立つ。

「これから時間ありますか？よかったら、僕、名古屋出身なので案内しますよ」

自然な流れでデートのお誘いの台詞がやってきた。一人で回りたいのに勘弁してほしい。

「いえ、結構です。もう帰るので」

私は駅へと向かう。別口を通るしかない。すると、東野は送ると言ってきた。断るも着いてくる東野にやや腹が立った。昔も同じことがあった気がする。その時は叫んでやった。しつこいと叫びかけた頃だ。腕を引かれ、ヒールを履いた足がおぼつく。

「本人が嫌がってますよね。やめてあげてくれませんか」

安室が笑顔を浮かべていた。思わず口元が引きつる。本当に推理してきちゃったんだけど。

「なんだ、海月先生、お連れさんがいたんですか」

愛梨が私の前に出てきて、仁王立ちをする。柔道やってるだけあり、貫禄あるなこの娘。東野は彼らに見つめられて逃げるように踵を返していった。

「まじで来たかのかよ」

私は安室に腕を掴まれたまま、じとりと二人に視線をやる。

「安室さんの推理なら朝飯前です！あ、昼飯前か」

何故か誇らしげに言う愛梨と、苦笑いを浮かべる安室。普通逆だろう。離してくれと言うと彼は謝りつつ腕を離した。

「それにしても、海月先生！あんなに言い寄られてて何で背負投とかしないんですか！」

愛梨が私に詰め寄る。水色の瞳が私を映した。

「お前じゃあるまいし。そもそも力仕事は出来ん」

本何処ぞの名探偵みたくヘリの操縦や射撃、ボールで人を気絶とか無理に決まっている。私は頭脳担当だ、というかそれしか向いてない。

「なら尚更危ないですよ。僕達が駆けつけれたから良かったものを」

安室が愛梨の後ろからそう口を出す。黙っとれと言いたいが、絶対に言わない。

「叫ぶから大丈夫、それに愛梨みたいに可愛いわけじゃないからな」

そう言うと、目の前の彼女の顔は真っ赤に染める。いい反応だな、こいつ。

「先生、そんなことないですよ！」

「そこは照れるっていえ、つっこめん」