【名探偵コナン】転生作家の心得 (ページ50)

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オマケ.『はじまりの円舞曲』ページ50

ポアロの扉を開けると、ドアについたベルが鳴った。いらっしゃいませという言葉がかけられて、カウンターで珈琲を頼んだ。愛梨は今、休憩中だろうか。

いつもの席へと腰を落とし、足を組む。パソコンを開いて、何時ものように原稿へと取り掛かった。

「はいどうぞ、海月先生」

梓が珈琲を私の邪魔にならないように置いてくれる。私は礼を言い、再び目線をパソコンへと向けた。すると、店奥の扉が開いて、二つの騒がしい声が出てきた。

「あ、そうだ。海月先生、紹介しないと。新しく人が増えたの」

金髪に、やや肌が黒い。そして、スモークブルーの瞳を称えた美青年と言うべきの容貌。私は彼を知っている。というか、今日からだったんですね、知りませんでした。

「あ、先生！会いたかったんですよー！」

愛梨が私を見て燥ぐ。お前は黙ってろ。私と彼の視線が交わった。一瞬、驚いたように眼が開かれたのは気のせいだとする、というかしておく。

「先生って、もしかして教師か作家さんですか？」

安室は愛梨や梓に尋ねる。彼女は嬉しそうに私の方へ手を向けた。

「今を代表する作家と一人、海月水盆先生です！」

我がことのように胸を張る愛梨に苦笑いをこぼしつつ、私は軽く会釈した。彼はカウンターから出てきて私の席へと近づいた。来るんじゃない。

「まさか、こんな身近にいるなんて思いもよりませんでした。僕、毎回先生の作品を読ませていただいてます。安室透です」

差し出された手を二、三秒ほど眺めたあと、その手を取った。

「安室さん、海月先生は常連さんなんで毎日来ますよ！」

愛梨、余計なこと言わんでよろしい。その刹那、安室の浮かべた表情に私は、酷く狼狽えた。本当に、嬉しそうに、微笑ったのだ、彼は。

え、何、その笑顔は。