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47.『ポアロの店員と仕掛けと・・・』 ページ48

"囚人"を狙いに来るキッドの為の罠は、お粗末だ。そもそも、大掛かりな罠ならば、深夜入場なぞさせるはずもない。

コナンは眉を顰めながら、百数名ほどの客達を見ていた。恐らく、もう紛れ込んでいるだろう。入念な身体チェックを潜り抜けるなど、奴には朝飯前だ。

「何で暗いの、愛梨姉ちゃん」

コナンは隣でケースを眺めながら、愁いを浮かべる愛梨を横目で見た。パズルで解錠する硝子の箱。

「海月先生、帰っちゃったんですよお……しかも、あれ絶対怒ってたと思います」

嘆く愛梨に、彼は肩をすくめる。まだ陽が沈む前に会った海月を思い出す。

「機嫌悪そうだったね。愛梨姉ちゃん、もっと上手く誘えばよかったんじゃないの?」

鋭い指摘に、愛梨は黙る。浮かぶのは、あの人の冷たい瞳。最初に会った時のような。

「コナンくん、愛梨さん。毛利先生が呼んでましたよ」

二人の会話に、安室が割って入った。その言葉に、二人は顔を上げた。そうだ、今はキッドだ。

「二人ともどうかしたんですか?」

安室が首を傾げる。その様子に二人は首を横に振って、彼らのもとへと向かった。

警備員と、宝石から半径五m内に巡らされた赤外線。そして、その外にいる客。昼間より広い広間に移された宝石は、白いパズルのついたケースに入れられて、その場に鎮座している。

「なんですか。あのパズル」

愛梨は、こっそりと安室に尋ねる。

「あれは、ケースを開けるための鍵みたいです。イギリスで開発されたものですが、今回はフランス製みたいですね。あの1000ピースを完成させないと開かないそうです」

ケースの側の台に置かれたばらばらのピースが、山を作っている。

「ただの嫌がらせじゃないですか。しかも、ミルクパズル……私、二週間かかります」

「僕は時間が取れれば、2日、3日ですかね。あ、でも、流石に1000ピースを毎回、嵌めるわけには行きませんから、最初に作られた型を数枚用意してるそうですよ、今回は持ってきて無いみたいですけど。

これ、海月先生がいれば、笑いそうな仕掛けですよね」

海月という言葉に、二人は口を噤む。言い出したのは、安室だが、愛梨の告げた彼女の過去が過ぎった。

――盗作されたんです

どんな気持ちで、それを乗り越えたのだろうと、安室は眼を伏せる。幾ら考えても、思い浮かぶのはあの冷たい瞳のみ。そして、あの時の柔らかい笑顔だ。

――約束だ

幼い日の面影は残っているのに。まるで、別人のようだ。

もうすぐ、怪盗がやって来る。

あとがき→←46.『怪盗に纏わる転生作家の闇』



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黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» ありがとうございます。 (2022年5月17日 22時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - はい、マジ好きです応援します (2022年5月17日 21時) (レス) id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» それは凄く嬉しいです。愛梨ちゃんがいてこそのこの作品なので是非とも応援してください。 (2022年5月17日 21時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - 夢主っぽいのがいるときいて何だ地雷か?って思ったらバリタイプだだった。 (2022年5月17日 21時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 目覚ましさん» そう言って、いただいて幸せです! (2018年12月14日 16時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.  
作成日時:2018年11月10日 22時

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