40.『It is only the introduction of fate』 ページ41
「あんたしか、あんたしかいなかったのに!」
そう甲高い声で責め立てる女。それを鬱陶しそうに男は見る。
「お前に言える権利あんのかよ。お前だって、浮気してたんだろ?」
ともかく俺はもう終わったからと玄関へと向かおうとする男に対して、怒りでわなわなと震える女。
「それでも!あんたしか、あんたしか、いなかったの!」
縋りつく女をあしらい、男はドアノブに手をかける。ふらふらと女は流し台へと後退する。
「じゃあな」
男が出ようとする。すると、背中に硬いものが当たって、落ちて派手な音を立てた。気になって、男が振り返った。それは、水切り籠の中に入れておいた食器だった。背中に当たって落ちた反動で、割れてしまっている。抗議の言葉を出そうとする男は、女が手に持っているものを見て、固まった。
そして、息つく間もなく。
「私を残してなんか、行かせない」
女は、包丁を持つ。そして、男に迫ってきた。男は、ひぃと悲鳴を上げて、迫ってきた女を、すんでのところで交わす。その間、玄関からは離れてしまった。
「私は!あんたを、あんたが売れなかった時も支えてきたのに!あんな、若い娘に、取られるものか!」
その瞳には、憎悪が浮かんでいる。その憎悪が掻き立てられる瞳に触発されるように、男もその場にあったワインの瓶を手に取って、近づいてきた女の頭にぶつけた。瓶は割れ、薄い黄緑色の液体が飛び散る。
女は強い衝撃に、包丁を離してしまい、数歩よろめいてしゃがみこむ。
その隙を狙って、床に放り捨てられた包丁を手に取る。向けられた得物に、女は後退りし、そして、自分も対抗できるものを後ろ手で探す。手に当たったのは、重量のある金属物質。
本来は、どうやら男が逃げ惑っていた時に落ちてきたらしい。重たいそれを両手に抱える。
「殺してやる!」
二人の声が重なった。
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この話を記憶の片隅に覚えていていただきたい。
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黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» ありがとうございます。 (2022年5月17日 22時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - はい、マジ好きです応援します (2022年5月17日 21時) (レス) id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» それは凄く嬉しいです。愛梨ちゃんがいてこそのこの作品なので是非とも応援してください。 (2022年5月17日 21時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - 夢主っぽいのがいるときいて何だ地雷か?って思ったらバリタイプだだった。 (2022年5月17日 21時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 目覚ましさん» そう言って、いただいて幸せです! (2018年12月14日 16時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2018年11月10日 22時