【名探偵コナン】転生作家の心得 (ページ38)

今日:15 hit、昨日:22 hit、合計:552,943 hit

37.『小さな探偵の巧妙な手口』ページ38

東京タワーが謎の破損の為に一時工事に入るというニュースを見ながら、案外早く決着がついたなと七夕の翌日に私は原稿を書き上げた。

担当の体調には気をつけてという言葉に頷きながら、私はそのままポアロへと足を向けた。

そこで、包帯を撒いたコナンくんに遭遇した。まあ、アイリッシュや黒ずくめのヘリとの戦いを制したのだから、こうはなるか。それにしても、映画だとかなり近づいたよね、君は。本編だと、君は裏方にしか回らないから。

「コナンくん、交通事故にでもあったのか？」

私はそう尋ねると、苦笑いを返したコナンくん。愛梨の一件で、警戒されているかと思ったが、そこまではないようだ。

「遭ってないよ、ちょっと大袈裟なだけだから。そういえば、灰原が海月先生の新刊、面白かったって言ってたよ」

誤魔化しきれてない言い訳を聞きながらも、その次に聞こえてきた言葉に、高揚感を覚えた。哀ちゃんに褒められるのは、かなり嬉しい。舞踊ってもいい。今ここではしないけど。

「辛口の哀ちゃんに言われると嬉しいな。最近、ポアロに来なくなってしまったから、少し寂しいな」

私がそう言うと、コナンは悪戯を思いついた子供のような顔をしながら―いや、現に彼は子供だが―、私の腕を掴んだ。

「なら、博士の家に行く？会えると思うけど」

思わぬ言葉に、一瞬固まった。そして、失言をしたのだと瞬時に悟った。そうだった、此処は普通の世界じゃないんだったな。

「他人の家にまで行く気は無いよ。コナンくん、手を離してくれるかな？」

私は動揺を顔に出さないようにしながら、私はコナンくんを諭す。頼む、離してくれない？あんまり君達と関わりたくないんだよね。特に、君と。絶対、行く途中に事件起きない？起きるよね？

「灰原が会いたそうにしてるんだけど、駄目かな？」

上目遣いに私を見上げるコナンくん。流石の私でも、躊躇してしまうほどの器用さだ。哀ちゃんを出されてしまえば、私は断れない。そう、慢性の哀ちゃん不足だ。

どうやら、分かる人は分かるらしい私の哀ちゃんへの可愛がりようは、コナンくんにも理解されているらしい。

あの手この手を使って、コナンくんが私をテリトリーに入れようとしている。いや、これ、赤井に仕込まれたんじゃないのか。絶対、赤井に仕込まれただろうが。

「海月先生も、会いたいって言ってたでしょ？」

言質を取られ、頷かざるを得なかった。どうしてそこまで、やるんだ、君達は。