【名探偵コナン】転生作家の心得

31.『漆黒の序章を見て逃げる』 ページ32

大型ショッピング・センターで人質事件があり、犯人は取り押さえたというニュースが流れた。

ちらりと映った人質の女性を見て、飲んでいたアイスコーヒーを噴き出した。

――ベルモットじゃねえか

変装してはいるが、私はよく知っている。というか、"この映画"を金曜ロードショーやDVDで何回見たと思っているのだ。

「……まさか、漆黒の追跡者(チェイサー)に突入したのか？」

原作と映画がごちゃごちゃしていてよく分からないなこれ。正直言うと、時間軸が可笑しくなり過ぎて私にはどうしょうもない。

取り敢えず、東京タワーに……いや東都タワーにさえ行かなければいいのだ。行かなければ巻き込まれる事はない。

卓袱台に置いていたスマホが唸る。私はそれに反応して、TVから眼を離して端末を手に取る。

画面には、幸村教授と表示されていた。

「いや、教授。また私を呼ぶ気ですか……」

痛くなる頭を抱えながら、その通話に応じるのだった。




アイリッシュという名前に、コナンは眼を伏せる。一般客に変装していたベルモットを問い詰めて出てきた新しいコードネームの持ち主。

ベルモットが変装を施したのだから、見つけることは難しいだろう。

「どうしたんだい？」

思案していると、突如声を掛けられる。意識の波から顔を上げたコナンは此処が何処であったかを思い出した。

「あ、いや、なんでもない」

あははと苦笑いを浮かべるコナン。

――こいつも、コードネーム持ちだからな

目の前の優男に、油断を見せるわけにいかないのだ。

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