13.『書庫にて語らふ』 ページ14
そして四日ほどして、やっと咳も収まり熱も引いた。短編を早急に書き上げたのがそれから三日後のことだった。取り敢えず危なかった、本当に。
げっそりとしながら、久々に太陽の光を浴びた。米花図書館に資料探しの為訪れている。平日もあってか、人も疎らであるし、元々静寂なのが有り難い。医学系の新しい知識が欲しい。今度、幸村教授に頼んで医学部関係者にも知識は貰うが。
本棚を曲がって見えた人物に対して、私は光の速さの如く、踵を返して別の本棚へと入った。なんでお前がいんだ、はっ倒すぞ。あんまり知り合いに会いたくないんだよ。
お、深海生物か。なんか気になるな。棚からその本を取り出しパラパラと眺める。ダイオウイカとか個人的に美味しいそうだよな。深海生物は美味くないらしいけど。"深海生物大百科"を元の棚へと直し、背広を眺めていく。
本棚横をよく知る人物が通っていった。私はそれから程なくして、医療系の本棚へと向かい、いくつか目についたものを引き抜いた。取り敢えずこれを借りるとしよう。
かなり重たいが、それまで苦ではない。イギリス生活じゃ、わりかしハードな生活を送っていた。いい寮だった、今度会いに行くよ寮母さん。
「お持ちしましょうか?」
懐古に浸っていると、真逆のよく知る人に声をかけられてしまった。
「いえ、大丈夫です。」
一瞬固まりかけたが、咄嗟の判断ができたようだ。偉いぞ私。
「女性が無理をするもんじゃないぞ、海月」
すると沖矢は溜息をつくように変声機の力で変えられた優しげな声音で、見事に赤井の発言が零れ出た。
「素が出てんぞ、沖矢さん」
そう睨めば、沖矢の声調に戻り、やや笑顔を見せながらほぼ自然に私の持っていた本を取り上げた。
貸出手続きを終え、図書館を出る。沖矢の滅多に開こうとしない緑色が顕になった。似合わねぇと私は軽く笑いつつ、眼を閉じた。
「あ、工藤邸に送られてきた最新刊読みました」
もうすぐ発売される最新刊だ。第十一巻目だ。高杉のやる気が私並みに無かった巻に仕上がってしまった。
「おい、家主より先に読んでどうする」
「許可は取りました」
家主は工藤新一だ。その父、工藤優作に私は送り続けている。私の腕を買ってくれたと見ていい。こればかりは私が嬉しすぎて泣きそうだった。彼には別便でアメリカに送った。
「今回のトリック、かなり手を混んでましたね」
沖矢は、現在コナンに貸したと言いつつ、私と新刊の談義をした。
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黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» ありがとうございます。 (2022年5月17日 22時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - はい、マジ好きです応援します (2022年5月17日 21時) (レス) id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» それは凄く嬉しいです。愛梨ちゃんがいてこそのこの作品なので是非とも応援してください。 (2022年5月17日 21時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - 夢主っぽいのがいるときいて何だ地雷か?って思ったらバリタイプだだった。 (2022年5月17日 21時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 目覚ましさん» そう言って、いただいて幸せです! (2018年12月14日 16時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2018年11月10日 22時