第1話 人それぞれの正義の形(1) ページ1
小さな頃から正義に反するものが嫌いだった。
『間違っている』
それに対して、理由もなく酷い嫌悪感を感じていた。
*
キーンコーンカーンコーン
授業終わりのチャイムのベルが鳴る。
中学校の頃よりたった5分しか延びてない筈の50分授業は、何故だかとても辛い。
でも、頑張らないと。
授業をしてくれてる人がいる。
親は、働いたお金を授業料に使ってくれている。だからきっと「疲れていても、授業を頑張る」ことが正しいこと。
だから、頑張らないと。
「あ〜次課題提出じゃんだりぃー......波原さん課題やって来てるよね?わり!見せてくんないかな、部活昨日長引いちゃってさー」
「いいけど......」
人に頼む時、言い訳をするのは、正しいことなの?
それをわざわざ声に出して聞くのは間違ってるから、聞いたりはしないけど。
「さんきゅー!」
違和感はあっても、きちんとお礼を言ってる限りは、貴方は間違っていないから。
*
「ナミちゃんは不思議だねぇ」
「ナミちゃんって私のこと?何が不思議なの?」
二年間、ずっと同じクラスの海野君。天然パーマらしく、猫っ毛をくるくる遊ばせている。色も地毛で茶色ががってて、彼は高校生にも関わらず、大学生のようだ。たれ目にゆっくりとした喋り方もあいまって、猫のようだと女子に人気だ。
私のことを、何故か「ナミちゃん」と呼んでいる。多分、波原のナミなんだろうけど、そう呼ぼうと思った理由はよくわからない。
「ナミちゃんはずっとそうやって生きてるの、疲れたりしないのかなぁって。だから、常にそういられるの、不思議だなぁって」
「疲れないよ」
「それは、どうして?」
一瞬だけ、言葉に詰まった。
「......。............。......間違ってしまう方が怖いし、疲れるから」
「人は間違えないで生きていられるの?」
今度は簡単に答えられた。
「生きられるよ」
そしたら今度は海野君が言葉に詰まった。
「......。」
彼は一呼吸おいたら、もう一度話し出した。
「そういいきれるのは、もしかして、『私が間違えてない』と思うから?」
そう、その通り。やさしい声だった。
そう思ったのに、どうしてか言葉が出せなかった。
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作者名:Sei | 作成日時:2017年6月17日 9時