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7話 ページ7

「話戻るが、一番奥の部屋だ」

 「はい」とも「ああ」ともつかない気の抜けた返事をしてロザリアは二階に上がる。
そういえば誰かに抱きしめられたのはあれが初めてのような気がした。

「なんか、殺風景……」

 黒い扉が七つ並んだ廊下の壁は白い大理石で出来ているようで、ところどころ黒くひび割れた模様がある。対して床の色は血の海を思わせる深い赤色で足を踏み出せば沈んでしまいそうに思えた。現にここは人間の世界ではないのだからそのようなことが起こっても何ら不思議ではない。
 おそるおそる片足を前に出したが沈むことはなく、そのまま足早に奥の部屋まで行って扉を開けた。

「……あれ」

 その扉を開けたまま隣の部屋の扉も開ける。

「どうなってるの」

 ビスマスの部屋が明らかに広すぎる。隣の部屋の壁があるはずの所には前の三部屋分の広さが足されている。まるでこの部屋だけ異空間に繋がっているようだった。
 入ってから天井も異様に高いことに気づく。窓ガラスが天井の縁まであり、陽の光が差し込んでいる。窓を除けば壁も天井も全体的に黒かった。

「欲張り……これ、どこに置けばいいの」

 呟いて右を向けば離れた場所に仕事机と思わしきものがあり、隣に上着掛け(これも黒い)が立てかけてあった。そこまで走ってローブをかける。

「机も黒……あの人、どれだけ黒が好きなの……よくゲシュタルト崩壊しないわね」

 呆れたように呟いてから何となく置かれた本を手に取って開いて見るが、見たことのない言語ばかりで読むことはできなかった。めくっている途中でふと止める。栞の代わりなのか、八重咲きの透き通るような薄桃色の花が挟まれており、白と黒のみの部屋にまるで合成写真のようにその色だけが鮮やかに映えている。
 見たことがない。それなのにロザリアは何故かその花を知っていた。

「……“アザレア”?」

 呟いた直後、部屋の外で何かが割れるような派手な音が響いた。おそらく一階だろう。ロザリアは本を閉じて部屋を駆け出した。

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設定タグ:死神 , ファンタジー , Twitter創作   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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ラブ(プロフ) - 私の作品も見てね (2020年9月4日 3時) (レス) id: bd5d30469e (このIDを非表示/違反報告)
ラブ(プロフ) - にてる (2020年8月21日 19時) (レス) id: bd5d30469e (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» もう一個の方も読んでくれてありがとうございます!頑張ります! (2017年5月30日 16時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ゆるかなさん» ありがとうございます!はやめに更新出来るよう頑張りますね! (2017年5月30日 16時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢 - 死神ファンタジック大好きです。もう一個の方も読みました!更新頑張ってください! (2017年5月30日 4時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2016年9月26日 22時

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