46話 ページ46
笑いながら嗣巷が指さしたのは部屋の奥にある窓。大人一人分の長さで、特徴的なのは窓ガラスがないことだった。近づいて見てみるとこの高さから地上へは十階くらいある。これが人間の世界にあったのならまるで飛び降りて死ねと言われているようなものだ、とロザリアは眉を寄せる。
「そうそう、ここからこう……」
そう言って嗣巷が背後からロザリアの両肩に手を置いて僅かに力を込めた。その瞬間、バンという音がして何事かと振り返ると奇妙な白い仮面をつけた腰まである長い黒髪の背の高い男が荒々しく入室してくるところだった。
「おいキチ◯イ教祖、なに勝手にふざけた真似してくれてんだ? 八つ裂きにされてぇのか」
呆然としていたロザリアはハッと我に返ると嗣巷の手を振り払って窓から離れた。
この人、私を突き落とそうとした?
「嫌だなぁ、本気で私がそんなひどいことすると思うかい?」
「頭のネジ外れたカルト集団の頭が言う台詞じゃねぇよなぁ? たった今子供への洗脳行為及び殺人未遂、自ら罪を重くするとはわざわざご愁傷様」
「どうでもいいけとイオは元気?」
「知るか」
一言でばっさり切ると男は「行くぞ」とロザリアの手を引いて部屋を出た。
「……ふむ、どうやらキチ◯イは死神にも感染するみたいだ。私を見張るために以前ここに来たキミの部下はいい加減正気に戻れたかな?」
扉が乱暴に閉められた後、嗣巷は一人呟いて笑った。
*
「あの、助けてくれてありがとうございます」
「ん? ああ、まあビスマスの所有物だからさ。ロザリアだっけ。ジルドと呼んで構わない」
「はい。ジルドさんはビスマス、さんと仲良いんですか?」
「向こうは迷惑そうだけどな。しょっちゅう『変態』って呼んでくるし」
……いろいろと気になるが突っ込まないほうがいいのかもしれない。
ふと彼は思い出したように立ち止まると、空いた片手で無造作に長く伸びたロザリアの前髪を指でそっと避ける。
「ああ、やっぱり可愛い顔してるね。俺が貰いたいくらいなのに。君くらいの歳の子って純粋で好きなんだよ。君を生み出した創造主は贅沢だ。まるで真新しい白いキャンバスに絵の具をのせるように華やかな色にも理不尽な色にも染められる。その肌に薄っすらと傷をつけたらきっと宝石を溶かしたように深紅――」
「す、すみませんそろそろ行きますありがとうございましたッ!」
言い終える前に離れ、素早く一礼してロザリアはその場から猛ダッシュで逃げた。
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ラブ(プロフ) - 私の作品も見てね (2020年9月4日 3時) (レス) id: bd5d30469e (このIDを非表示/違反報告)
ラブ(プロフ) - にてる (2020年8月21日 19時) (レス) id: bd5d30469e (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» もう一個の方も読んでくれてありがとうございます!頑張ります! (2017年5月30日 16時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ゆるかなさん» ありがとうございます!はやめに更新出来るよう頑張りますね! (2017年5月30日 16時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢 - 死神ファンタジック大好きです。もう一個の方も読みました!更新頑張ってください! (2017年5月30日 4時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2016年9月26日 22時