43話 THE GURU ページ43
＊
ロザリアは一人、城内を探索していた。以前は『怪しい部屋には入るな』だったのが何故か今度は『気になる部屋があれば入っていい』と許可がおりたのだ。
幾つか並んだ黒い扉の前で立ち止まる。ここは回収した魂を一時的に閉じ込めてある部屋だと聞いた。扉の一つを開けると壁も天井も床も白くまるで霊安室を思わせる静けさだった。閉じ込めると行っても檻や鎖はどこにもないが、特別な術がかかっているので霊体は部屋を出ることが出来ないらしい。
何も物は置かれていないのですぐに部屋の奥に人が居るのが見える。彼は壁にもたれて座ったままこちらを見ようともしない。ビスマスは霊の中には気の触れてしまった人間も居ると言っていた。彼もおそらくそうなのだろう。そっと近づいてもどこか遠くを見つめるばかりだった。
あまり長居はしないそうがいいだろう。そう思って引き返そうとした時、
「……ナナミ……？」
突然の声に振り返ると、先ほどまで虚ろな目でどこか一点を見つめていた男がこちらを見上げていた。
今、この人は『ナナミ』と言った？ 私を誰かと間違えているの？
「嘘……ナナミ……」
呆然とした表情を浮かべて男が立ち上がったかと思うと急に抱きしめられる。霊体とは言えない程生きた人間のような感触がして思わず息を呑んだ。
「会いたかった……ごめん……死ぬつもりじゃなかったんだよ」
「あ、の……」
何て言えばいい？ 間違えたままの方がいいのだろうか。その方がこの人は救われる？
「信じてくれ。捨てたわけじゃない。危険な目にあわせたくなかったんだよ。本当……勝手だよな。何一つ父親らしいことしてやれなくて……何も分かってやれなかった。だから俺はイオ、に……」
イオ？
その名前に既視感を覚えた直後、ロザリアは軽く突きとばされた。男の様子がおかしい。片手で頭を押さえ、何かを恐れているかのように何もいない部屋を見渡している。
「イオ、イオに殺され……ぁ……嫌だ……何で……い痛い痛い痛い痛い！！ ああああ何で何でだよ何でぇッ！！ 何したっていうんだよ何でお前に殺されんだよぉッ！！」
ガンッ、と音を立てて壁に頭をぶつけはじめる男の姿にロザリアはその場から動くことが出来なかった。
「忘れたいのにぃ……なぁ、お前……」
男は暗く淀んだ目にロザリアを映して薄く笑う。
「イオに会いてえんだよ……会って、殺したいんだ……いいだろぅ……？ ここから出してくれよ……」
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ラブ(プロフ) - 私の作品も見てね (2020年9月4日 3時) (
レス) id: bd5d30469e (このIDを非表示/違反報告)
ラブ(プロフ) - にてる (2020年8月21日 19時) (レス) id: bd5d30469e (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» もう一個の方も読んでくれてありがとうございます！頑張ります！ (2017年5月30日 16時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ゆるかなさん» ありがとうございます！はやめに更新出来るよう頑張りますね！ (2017年5月30日 16時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢 - 死神ファンタジック大好きです。もう一個の方も読みました！更新頑張ってください！ (2017年5月30日 4時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田無苑珠 | 作成日時：2016年9月26日 22時
