雨と晴れ、人と機械 ２

お友達 ページ4

「もう行っちゃうのか？ ここに１人か？ 病院は嫌いなのに、１人は嫌だ」

「あぁ、そうだった。お前みたいに忘れるとこだった。ほら、こいつがいるから寂しくないだろ？」

　そう言ってクラウディがぽいと投げて寄越したのは、大事な友達だった。

　友達を落とさないようにしっかりキャッチしてぎゅっと抱き締める。

「もっと丁寧に扱え。投げられるの嫌いなんだ」

「悪い。じゃあな、また来る。行くぞ」

「……はい」

「ばいばい」

２人とも行ってしまった。

　病室には自分１人だけ残されてしまった。

　寂しくて、友達をぎゅっと抱き締める。こうすると落ち着く。

　お父さんとお母さんがくれた友達。生まれたときから一緒にいる。いつも一緒に寝ている。

「あ」

　ムーンはどこか聞くのを忘れた。

　どこに行ったんだろう？ 一緒にエレベーターに乗る約束をしたのに。

　１人じゃあ怖いから、一緒に乗ってくれるって言ったのに。

　１人は怖い。

　１だと寂しい。

　１人でいることが嫌いだ。

　１人じゃ駄目だ。

　怖くて、寂しくて、嫌で、友達をもっと強く抱き締める。

「なぁ、寂しいな」

(そうだね)

　友達が答えた。

「俺、１人は嫌いなんだ」

(僕もだよ)

「一緒にいてくれるよな」

(もちろん)

「それならいいんだ。それでいい……」

　友達は笑っている。どうしていつもそんなに笑顔でいられるんだろう。

(アシッド)

「ん？ 何だ？」

(もう一回寝た方がいいよ)

「どうしてだ？」

(だって、僕とお話しできてるんだもの。僕とお話しするより眠った方が良いんだよ)

「……じゃあ、そうする」

(それがいいよ)

「ムーンが来たら、起こしてな」

(うん)

　目を閉じる。

　眠ってしまうまで、そんなに時間はかからなかった。

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