お話聞かせましょう

３年前の話 ページ9

１５年ほど前からですかね。本の内容が改変されてしまうというのが起こりだしたのは。

　悲しい結末迎えるものや主人公が死んでしまう、いわゆるバッドエンドの物語が被害にあっていました。

　どんな改変かって？

　悲劇を喜劇へ。バッドエンドをハッピーエンドに改変してしまうのです。

　死ぬはずだった主人公は最新の技術で助かったり、報われないはずの恋が報われたり、誰も不幸で悲しい目に合わなかったりといった感じですね。

　それは素敵なことだと思いますか？ それともそれは間違ったことだと思いますか？

　……貴女ならそう言うと信じていましたよ。

　本の内容を改変してしまうというのはその本の作者が伝えたかったことを全部潰してしまうのです。

　本には作者の想いが詰まっているのです。

　貴女もそうでしょう？

　勝手な改変は許されることではないのです。

　私達は犯人を捕まえようと必死になって探しましたが見つけるどころか、手掛かりさえ見つけることはできませんでした。

　探している間にも多くの本が改変されてしまいました。

　改変されそうな本を一ヶ所に集めて監視したりもしましたが、意味がありませんでした。

　何をしても無駄で、お手上げ状態でした。

　それが１２年もの間続いたんです。

　ところが３年前、それがぴったりと止みました。

　最後に改変されたのは人魚姫だったはすです。

　結末ではなく、冒頭が改変されていました。

　確か……、王子様の乗った船は沈むことなく人魚姫は遠目から船上の輝きを見ているだけでした。

　この改変を最後に、本の内容が改変されることはなくなりました。

　一体誰が何の目的で改変を行っていたのかは全く分からないままでした。

　改変された本ですか？ 館長が全て元に戻しましたよ。私達職員には本を改変する権限はありませんので。

　かなり重労働だったようで、全て終わった後は３日は寝込んでいましたね。

　全ての本は元通りになって、ある意味ハッピーエンドです。

　分かっていますよ。またいつ現れるか分かりません。次こそは捕まえられるよう頑張らなければ。

　次の話をしましょうか、あれは……、７５年前の話でしたかね。

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