お話聞かせましょう

１００年前の話　２ ページ3

急にそんなことをするものですから驚いてしまいました。

　ですがそれが良かった……、というのもおかしいですが少女はもとの本の姿に戻ることができたのです。

　少し角が潰れてしまいましたがね……。

　でも、彼のお陰で本を元の場所に戻すことができたのです。

　彼が言うには、今回の災害でビックリして人の姿になったのだろうと、だからショックを与えれば元に戻ると思ったそうです。

　ですが、貴重な本に傷を付けたという事実はなくなりません。

　ちゃんと叱っておきました、その後、館長にしっかり罰も与えられたようですよ。

　え？ 彼は受付なのにどうしてここに来たのかって？

　あのときは本当に大変だったのです。人手が足りなくなるほどに。

　本当は彼はあの時、違う場所の手伝いをしていたそうですが他の司書に頼まれ、私を呼びに来たそうです。

　なぜ呼びに来たか？ あぁ、すみません。それはよく覚えていないのです。

　あなた程ではないですが、私もかなり年ですからね、記憶力が落ちてきてしまって……。

　体は新しくできても、頭の方はどうにも……。

　そろそろ私も引退ですかね……。何もかも分からなくなる前に、やめた方がいいでしょうね。

　あぁ、すみません。関係のない話をしてしまいました。

　あの後、あの本だけではなく、他の本も人の姿にはなっていませんよ。私の記憶が正しければの話ですがね。

　あなた程の力はなかったようです。

　他になにか聞きたいことは？ そうですか、特にはありませんか。

　それでは次の話をしましょう。

　確かあれは……、５４年前のことでした。

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