お話聞かせましょう

おはよう ページ1

おはよう。

　今回はかなり早いお目覚めですね。この前は３００年近く眠っていたのに。

　私の話が聞きたくて？ そうですか、でもあまり早く目覚められても話せる話は少ないですよ。

　長い時間を過ごしたからこそ、たくさん話せるんです。

　短くてもいい？ そうですか。

　その分頻繁に目覚めるようにすると……、それはあまりおすすめできませんが…………。

　だって、あなたは貴重なものです。そんなに起きていては痛んでしまいます。

　起きるときに人の形になるだけでも大変でしょうに。

　何ですか？

　あぁ、この体ですか？

　新調したんです、つい３９年ほど前に。

　……駄目ですよ。

　あなたは唯一無二の存在です。体を交換するのは駄目です。

　私のように代えのきく役職の者だったら別ですよ。私が死んでも誰かがあなたに話を聞かせてくれます。

　私は消耗品ですよ。本の管理をしているだけですからね。仕事を覚えれば誰でもできます。

　……そんなに急かさないでください。

　あなたが眠っていた間の、１００年分の話をしましょう。

　この１００年いろいろありました、ほら、そこに座ってください。

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