病気とは言わないで２

あの子の行方　４ ページ49

病気が完治することはとてもいいことだとは思うけれど、この場合。

　この特殊な、普通じゃない、ここの人達が病気と呼ぶそれが、完治することは本当にいいことなのだろうか？

　私が知っている中では、イートはいつもエイトに守られていた。

　それで困っていたときもあったけれど、それ以上にイートは助けられていた……、と思う。

　なんというか、エイトはイートの精神的な支えでもあったのかもしれない。

　そんな存在がある日突然消えてしまったら……。

　私だったらきっと、耐えられない。

　イートがここに来る前にどんな生活を送っていたかは分からないけど、精神的な支えを失った状態で元の生活に戻る、というのはあんまりじゃないだろうか……。

「ユカ？」

　黙り込んでしまった私の顔を心配そうにジャックがのぞき込んだ。

「あ、ごめん。その、イートのことで、色々、考えていて……」

「……そうよね、せっかく仲良くなったのにお別れなんて、寂しいわ」

　アリスさんが頬杖をつきながら言う。

「あぁ、そうだわユカ。お別れの挨拶をしてきたらどう？ たぶんイートは自分の病室で荷物をまとめているはずよ。そろそろ出ていっちゃうらしいから、急いだほうがいいかも」

「それいいねぇ。ボクも行こうかな？」

「んー、あんたはもうちょっと私とお喋りしましょう」

　……早く。

　早く行かなきゃ。

　弾かれるように立って、イートの病室へと向かった。

あの子の行方　5→←あの子の行方　３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す