ぷるぷるした人 4 ページ4
「いや、そこ、までは……。大丈夫だから…………」
「そんなこと言わずにさ、何かが悪化したら大変だ。今すぐ呼んでくる!」
と、止める間もなくスラムは壁をのぼり、天井の排気口から出ていってしまった。
「あ……」
「気が早いのもスラムの特徴で……」
呆れたような顔でロウさんは言う。
「そうだ、ユカ。座ったばかりで申し訳ないがこっちに来てくれないか?」
「え、あ、はい」
ベッドから立ち上がり、ロウさんの側まで行く。
「そこに本があるだろう」
「あぁ、あります、ね」
ロウさんの方の机の上に、可愛らしいピンク色のカバーの本が置かれていた。
タイトルや表紙を見るに恋愛小説の類いだろうか。
「それを開いて見せてくれないか? 先生が持ってきてくれたもので、一応読んでおこうと思ったが両手が使えなくてね……」
「……分かりました」
「ありがとう。助かった」
一応匿ってもらっているから、何かしら恩返しをしなくては、そう思いロウさんの頼みを了承した。
本を取り、ロウさんの隣に座って本を開いて見せる。
開かれたページを読み終えるとロウさんは「次へ」と言うので、すぐにページをめくる。
中身は予想通り恋愛小説だったが、高校に入ったばかりの少女が重い病気を患いながらも、青春を謳歌し、恋をして、想い人と結ばれるが最終的には死んでしまうというような内容だった。
すべて読み終わって本を閉じる。ふぅ、とロウさんは溜め息を吐いた。
「私の趣味じゃないかな」
「それは、どういう……」
「あまり、こういった話は好きではないんだ、辛くなる。それに恋愛ものは苦手、というか恋をするということ自体が苦手なんだ」
ちら、とロウさんが時計の方を見た。私もつられて時計の方を見ると読み始めてから2時間程経っていた。
ハッパが探している様子も、大きな音もしなくなっていたが、医者を呼んでくるといって出ていったスラムはまだ帰ってきていなかった。
「まだスラムは帰らないか。はぁ。あぁ、そうだ。ユカ、お礼を言わせてくれ、ありがとう、助かったよ。本は机に置いておいてくれ」
「あぁ、いえ、あの、こちらこそ」
本を机の上に置き、ベッドから立ち上がる。
「まだ安全だと決まったわけではないから、もう少し居た方がいいんじゃないか? それにスラムも待った方がいい」
「あ、はい」
そう言われ、空いた方のベッドに座ったとき。
「きゃー!!」
廊下から悲鳴が聞こえた。
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ぺぽん(プロフ) - すっごく面白いです!どのキャラも個性的で読むのが楽しい🎶応援してます! (2022年8月21日 7時) (レス) @page49 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ペンバタのサブ - 神作だあああああああ!!!応援してます! (2022年4月11日 15時) (レス) id: a2299a2d24 (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» 投稿しました!(返信不要です) 衛生兵079様の他の作品もいつも拝見させて頂いております...沢山の素敵な作品をありがとうございます💓😭 (2022年2月6日 17時) (レス) id: 267274e32b (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 頭は痛くないさん» 大丈夫ですよ。 (2022年2月6日 16時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
頭は痛くない(プロフ) - 衛生兵079さん» ありがとうございます(TT)描き終えたら私の作品の“デジタルなイラスト集”に載せたいのですが大丈夫でしょうか、もちろん衛生兵079様の作品のキャラクターだということは明記致します (2022年2月6日 14時) (レス) id: 82fde595ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年6月9日 16時