お目覚めのようで ページ38
悪い夢だ。お母さんが来ないのも、いじめられたのも、裏切られたのも、今こうなってしまっているのも悪い夢なんだ。
きっと目を覚ませば目の前にはお母さんがいてあの優しい声で子守唄を歌ってくれているはずなんだ。
お母さんの青い目に自分の青い目が映って、それから……。
目を開けると、こちらを心配そうに見ているムーンと目が合った。
どうやら自分は自室のベッドに寝かされているようだった。
「あしっど」
まだ少し夢の中のような気分だったのがだんだん覚めていく。
「ん。あ、どれくらい寝てた?」
ムーンの青い目に自分の赤い目が映っていた。
「8時間18分44秒デス。体調ハドウデスカ?」
「あぁ、大丈夫だ。その、なんか、悪かったな」
「イイエ、ソンナコトアリマセン。ソレヨリモ、大丈夫ソウデ何ヨリデス」
「あの……、悪いけど、あれ、忘れてくれないか?」
「何故?」
自分がどんなことをしていたのか、はっきりと覚えている。
迷惑をかけたということよりも、自分のこんな姿を見られてしまったというのが恥ずかしかった。
それに、いつもはあそこまで酷くならないし、倒れることもないのに。
「あの、ほら。あんな風になってるところ、見られたくなかったから……」
「……スミマセン。デモ、消去ハシタクナイデス」
「どうしてだ?」
「次、同ジコトガアッタトキ、先程ノヨウニナニモデキナイノハ嫌ナノデス」
真っ直ぐこちらを見ながらムーンが言う。
「……まぁ、いいや。勝手にしろ」
「ハイ、了解デス」
ベッドから体を起こすと、ムーンが鍋を持ってきてくれた。
「何だこれ?」
「空腹デハナイカト思イ作リマシタ。簡単ナすーぷデス」
蓋を取ると中には美味しそうなスープが入っていた。
「おぉ、美味そう。でも材料とかはどうしたんだ?」
確か冷蔵庫は空っぽで何もなかったはずだ。
調味料ならいくつかあったが、スープにはたくさん具材が入っている。
「冷蔵庫ガ空ダッタノデ、買ッテキマシタ」
「そういうことか」
「アト、洗濯ヤ掃除モヤッテオキマシタ」
と言うと、ムーンは小さく笑って見せた。
「ありがとう。何でも出来るんだな、お前」
「イエ、何デモトイウ訳デハアリマセン。基本的ナ家事シカデキマセン」
「それだけでもすごいことだ。俺は料理作れないし、洗濯機の動かし方未だにによく分からないからな」
「ソレハソレデ問題デハ……」
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慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時