お話し ページ24
「デモ、ソンナニ続クモノナノデショウカ? 他ノ国ニ自由ニ行キ来デキルヨウニナッタ今ソレハ難シイノデハ?」
「国の体制や法律が変わっても、ずーっと昔か
ら嫌われて、排除されてきたんだ、そう簡単には変わらんさ」
「コンナ国デ、ソノ目デヨク生キテコレマシタネ」
「ん。もっと昔に生まれてたら生まれてすぐに生き埋めか溺殺か、ともかくすぐに殺されてた。でも今は緩くなってるから少しいじめられる程度で済んだ。だからここにいれるんだ」
「本当ニ少シデスカ?」
「深入りは禁物だ、あまり聞かないで……あ、おい!」
少し先を歩いていたムーンの髪を掴んで後ろに引き寄せた。
その瞬間すれすれのところを車が猛スピードで走り抜けていった。このまま歩いていたら轢かれているところだった。
「この馬鹿! 前見て歩け!」
「スミマセン。話ニ夢中ニナッテシマッテ……」
申し訳なさそうにムーンはうつむいた。
「次がないようにしろよ」
「了解シマシタ」
「話は後、歩きながらじゃ駄目だ。前方不注意で事故死なんて笑えない」
「デモ……」
「いいから黙って歩け」
沈黙。黙って並んで歩く自分達の姿は端から見たら相当怪しいものだったろう。
でも、また話に夢中になって車に轢かれては困る。
そこから一言も発することなく15分くらい歩いて、自分の家に着いた。
「ここが俺の家」
「ココガ……」
「じゃ、また明日な」
鍵を開け家に入ろうとすると、ムーンは袖を掴んで引き止めた。
「私ハドウシタラ……」
「家に帰ればいいだろ。また明日も来いよ」
「アソコニハモウ帰レマセン。帰リタクナイ。デモ、行クトコロガナイ」
「じゃあ入れ、ここに住め」
そう言うとムーンは落ち込んだような顔から一転して明るい笑顔に変わった。
「イイノデスカ?」
「あぁ、別に構わないさ。これで寂しくなくなるなぁ……」
それに家族みたいだ。
ずっと誰かと一緒に暮らしてみたかった。
家にムーンも入れてやり、その辺の椅子に座らせて、そのまま自分はベッドに向かった。
もう眠気が限界まで来ていた。今すぐ眠りたかった。
「そうだ。ムーンは寝るのか?」
「私ニハ睡眠ハ必要ナイノデ」
「じゃあ俺寝るから、家の中勝手に見といても構わないけど何も触るなよ、それから、えっと……うん。おやすみ」
リュックを床に投げ捨て友達を抱いてベッドに倒れ込む。
「オヤスミ」
眠りに落ちる前、そう聞こえた気がした。
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慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時