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無くなった ページ22

「うーん、完璧。後は栓抜いて流すだけだ」

 浴槽の栓を抜き、溶けた体を流す。しかしそのままでは上手く流れないので、蛇口を捻って水を出して薄める。

 水は溶けたやつとそう簡単に混ざらなかった。

 手を直接突っ込んで混ぜるわけにもいかないので何か丁度いいものを探すが、見える範囲にはない。

「ムーン、長い棒か何かないか? これ混ぜるのに丁度いいやつ」

「ソレデハ、コレヲ」

 そう言ってムーンが取り出したのはデッキブラシ。自分からだと見えない位置に置いてあったらしい。

 ムーンからデッキブラシを受け取り、浴槽の中身をかき混ぜる。

 水と混ざってどろどろだったのがさらさらになって、どんどん流れていく。

 あんなに大事にしてたのに。

「あ、あ、ああ、無くなる。全部流れてく」

 もうほとんど水しか残っていないが、ぐるぐる混ぜる。

 もう少しで全部無くなる。

「ははは、さよならだ。大好きな家族」

「……サヨナラ」

 流れていく家族に向かってムーンは小さく手を振っていた。

 全部すっかり流れてしまったのを確認してから、デッキブラシを使って浴槽を綺麗にする。それから、使ったデッキブラシも綺麗にして元の位置に戻した。

「後は……、お金貰ってこうかな」

「何ノタメニ?」

「生きていくのに必要なんだ。俺みたいのは仕事に就かせてもらえないから、他の人から貰ってくしかないんだ。ムーン、この家はどこにお金ある?」

「ソンナモノナノデショウカ。……確カ、研究室ノ金庫ニアッタハズデス」

「そうか。じゃあ行くぞ」

 ガスマスクを外し、空の瓶と一緒にリュックに詰め込む。それからリュックを持ってムーンと出会った研究室に向かう。

 金庫は研究室の隅、隠されるようにして置いてあった。

 ダイヤル式の鍵を適当にがちゃがちゃと回すが、当然開く気配はない。

「番号は?」

「右ニ15、左ニ27、右ニ42」

 言われた通りにダイヤルを合わせるとかちゃんと音がして金庫は開いた。

「お、本当に開いた。何で知ってたんだ?」

「イツモ開ケルトキニ声ニ出シテ言ッテイタノデ覚エテイマシタ」

「やっぱり無用心だな」

 金庫の中にはたくさんの札束が入っていた。多分1億位は入っていると思う。こんなに溜め込んでいたとは驚きだ。

 その中から、3つほど札束を頂戴しリュックにしまい、金庫を閉じた。

「よし、帰ろう」

「ソレダケシカ持ッテイカナイノデスカ?」

「多くはいらないさ、邪魔になる」

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慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時

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