現実より少しずれた世界で

魚と僕 ページ6

　僕の町が水に沈んだ。

　水に沈んだから、たくさん魚が泳いでいて、昆布とかの海草が揺らめいている。

　そういえば、大きな魚は危ないってテレビの人が言っていたっけ？

　そして今、僕の目の前に大きな魚がいる。

　魚は大きく口を開いて、ゆらゆらこっちに泳いでくる。

　僕の目の前まで来た魚はさっきよりも大きく大きく口を開いて、ボールを吐き出した。

　ごろん。

　がんっ。

　鈍い音をたててボールが道路に転がった。

　重いのかなと思って持ってみるとそんなに重くなかった。

　魚はボールをじっと見て、尾びれを振っている。

「遊びたいの？」

　僕がボールを投げると、魚はすごいスピードでボールを取りに泳いでいった。

　そして、ボールをくわえると僕のところに戻ってきた。

　魚は僕の前にまたボールを落とした。

　さっきよりも激しく尾びれを振って、喜んでるみたいだった。

　それを何回も何十回も繰り返して遊んだ。

　遊んでるうちに日が暮れてきて、僕が帰らなきゃいけない時間になった。

「ごめん。僕帰らなくちゃいけないんだ」

　僕がそう言うと、魚は少し寂しそうな感じだったけど帰ってもいいってジェスチャーをした。

　帰る前に魚は遊んでくれたお礼として、僕にキラキラ輝く大きな真珠みたいな白い玉をくれた。

「また一緒に遊ぼうね！」

　もうすっかり日が沈んじゃったから、早く帰らなくちゃ。

　僕はおうちに向かって走り出した。





『水に沈むのは７５年ぶりとのことですが、何故今になって水に沈んでしまったのでしょうか？』

『いまだに解明されていない現象なので、理由ははっきりとは分かりませんね』

『この場合、一体何に気を付ければいいんでしょうか？』

『やはり一番気を付けるべきは魚、ですかね』

『魚、ですか？』

『えぇ、魚です。大きく分けて２種類いましてね。人を襲って食べてしまう魚と人とやたら遊びたがる魚と』

『はぁ、そうですか』

『前者はもちろん危険ですが、遊びたがる魚も危険なんです。魚自体には危険はないんですがね、ただ遊びたがるだけですし』

『それだけなのにどうして危険なんですか？』

『問題は遊び終わった後なんです。白い玉をくれるんですがね。それ、人食い魚の卵なんですよ。受け取ってから大体８時間〜２５時間程度で孵化します』

『じゃあ、例え出会ってしまっても遊んではいけないということですね』

『はい、そうです』

『テレビの前の皆さんも、魚には気を付けましょう』

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