体屋 ページ44
「すみません」
私が声をかけると、大きな丸眼鏡をかけ青い髪を三編みにした背の低い店員が振り返った。
「あ、はい。いらっしゃいませ、本日はどのようなお体をお求めでしょうか?」
「あぁ、体の調子が悪くてね、ちょっとみてほしいんだ」
「修理の方ですね、分かりました。では、奥の部屋へどうぞ」
店員に案内され、店の奥にある部屋へと向かう。
その部屋は床から天井まで真っ白で、棚や椅子、机などすべての家具も真っ白だった。
「そちらの席へどうぞ」
部屋の中央に置かれた机を挟んで店員と向かい合うように座る。
「それで、体のどこが調子が悪いか教えていただけますか?」
「1ヶ月ほど前かな、急に左腕が上がらなくなったのと、以前直してもらったときに切り開いたお腹のところが勝手に開いて中身がこぼれてしまうことがあるんだ。あと声も出しづらくなって、今はラジオを使って喋っている。まぁ、こんなところだよ」
「なるほど。そうなると……」
棚の間からひらひらと数枚の紙が店員の手元へ移動してくる。そしてそれを店員は真剣な顔で読んでいる。
「おや?」
「どうしたんだ?」
「お客様、いまお客様が使われている体は三十年ほど前に生産終了してしまっていて、予備パーツもなく修理できません」
「あー、それは残念。まぁ、あまり人気のないようだったし仕方がないねぇ」
「というか、その体はお客様しか使用していませんね。お客様のためだけに作られた体です」
「そうか。そうだったけかな。……修理できないってことは、新しく買わなくちゃいけないってことになるのか」
「そうなりますね。お客様の場合、他の実体のない方と違って少し特殊なので1から体の材料を集めるところから、ということになりますから今日注文してもかなりの時間がかかってしまいます」
「あぁ、構わんよ。待つのは得意なんだ。私の友人にそんなやつがいるからね、影響されて私も待つのが得意になったんだ」
「どんな体にするか、ご希望は?」
「うーん、動きやすくて頑丈なものがいいかな。デザインは今の体とあまり変わらないように。あ、手だ、手を重要視してほしい。繊細で細かな作業ができるようにしておくれ。今言ったのを満たしていればあとは自由にしていい」
「はい、承りました。では完成し次第連絡をいたします」
「あぁ、頼んだよ」
「はい。お任せください」
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ワモテ(プロフ) - この独特な世界観が好きです! (2022年6月28日 19時) (レス) @page4 id: d60369b53d (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» やっぱりそうでしたか!ありがとうございます! (2022年4月12日 21時) (レス) id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» 同じお店です。女性はそのお店の店長さんです。 (2022年4月12日 20時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» あ、あっ…!上手く言い表せないんですけどもう全部好きです((それで思ったんですけど、この話の女性が開いてるお店って道案内に出てきたおじさんが言っていたのと同じですかね? (2022年4月12日 20時) (レス) @page38 id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» リクエストありがとうございます。風、空ですね、了解しました。 (2022年4月12日 10時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2017年12月25日 23時