現実より少しずれた世界で

待ちぼうけ ページ41

待っている。

　私は待っている。

　何を待っているのか？ それを聞かれると答えに迷う。

　いつから、何を待っているのか自分でも分からないから。

　ただ私は待っているのだ。

　この扉の前で。

　何年も何十年も、何百年、何千年だって待ってみせるさ。

　私にはそれができるんだから。

　来もしない誰かを、起こりもしない何かを、永久にここで待つんだ。

　誰かが私の元へ来るまで、何かが私に起こるまで。

　何杯目になるか分からないコーヒーを飲んで。

　何十本目になるか分からないタバコをふかして。

　何百個目になるか分からない飴を噛み砕いて。

　何千回目になるか分からないため息をついて。

　それでもただ私は待ち続けるのだ。

　もしかしたら1分後に待っていたものが来るかもしれない。

　1時間、半日、1日、とにかく待っていれば、それはきっと来るはずなんだ。

　そんな期待を膨らませながら私は待ち続けている。

　ただ座って、たまに姿勢を変えて、時計や新聞を見ながらずっと待っている。

　ずっと待っているんだ。

　何かを、私は待っている。

　それが永遠に来ないものと知っても私は待つだろう。

　それでも必ず来る、そう信じているから。

　私は待っている。

　待っている。

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