検索窓
今日:6 hit、昨日:12 hit、合計:53,286 hit

女性の花 ページ34

女は花を咲かす。

 それは肉眼では決して見えない花だ。

 不思議と私にはそれが見えた。

 幼い頃、はっきりと覚えていないが不思議な世界に迷い込み帰ってきてから見えるようになったのだ。

 家族は夢を見ていたんだと笑ったが、私はあれは夢でなかったと思う。

 現にこうして女に咲く花が見えているのだから。

 最初に見えたのは母親の花。

 すでに萎れ、徐々に花びらが散り始めていた。

 次に見えたのは姉。

 姉は花ではなく蕾だったが、いくつか歳を重ねると花は開き、色鮮やかな花を咲かせた。

 その次にクラスメイト、その次に道をゆく人、花はどんどん見えるようになっていった。

 何故か男には花は咲いていなかった。

 女だけに咲く花はどれも同じものはなく、状態も蕾であったり、満開であったり、枯れていたりと様々だった。

 花を見続けて、大学も卒業間近に迫ったある日、不思議な女を見つけた。

 その女には花でも蕾でもなく双葉があったのだ。

 それは初めて見るものだった。そして私は気がついたら彼女に声をかけていた。

「あなた、花屋さんなの?」

 なんと声をかけたかはっきりと覚えていないが、彼女は優しく笑ってそう言った。

 それから彼女は双葉を愛しそうに撫でると、私のそばに来て周りに聞こえないようヒソヒソ声で囁いた。

「ごめんなさい、この前人にあげちゃったばかりだから。育つまでもう少し待って、今度はね黄色のお花よ」

 それは、どういうことだ。

「じゃあね」

 私が聞く前に彼女は足早に去っていってしまい、追いかけようとも思ったが彼女はあっという間に人混みに紛れ消えてしまった。

 それから時たま女から声をかけられるようになった。

 友人には羨ましがられたが、そんないいものではない。

「ねぇ、花屋さん」

 声をかけてくる女は皆そう私を呼ぶのだ。

「私のお花、持っていって」

 そう言って、花を差し出す。

 周りの人間には見えない花を私は受け取り家へと持ち帰る。

 すると翌日には綺麗サッパリ消えている。

 正直何が何だか私にはわからない。

 あの世界へ再び行けば何か分かるかもしれないが、今は行く方法が見つからない。

花屋さん→←世界で一番の



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (199 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
91人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , 小説 , 短編集 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ワモテ(プロフ) - この独特な世界観が好きです! (2022年6月28日 19時) (レス) @page4 id: d60369b53d (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» やっぱりそうでしたか!ありがとうございます! (2022年4月12日 21時) (レス) id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» 同じお店です。女性はそのお店の店長さんです。 (2022年4月12日 20時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» あ、あっ…!上手く言い表せないんですけどもう全部好きです((それで思ったんですけど、この話の女性が開いてるお店って道案内に出てきたおじさんが言っていたのと同じですかね? (2022年4月12日 20時) (レス) @page38 id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» リクエストありがとうございます。風、空ですね、了解しました。 (2022年4月12日 10時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:衛生兵079 | 作成日時:2017年12月25日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。