現実より少しずれた世界で

彼が来る ページ24

カランカランと音を立て、今日も彼がやってくる。

　月のない夜やって来る、フクロウ鳴く夜やって来る。

　暗い闇夜をかき分けて、カランカランとやって来る。

　黒いカンテラ左手に、赤い手斧を右の手に。

　黒いカンテラ道照らし、照らせぬ闇はどこもなく。

　見えない場所も見えるから、誰も彼から逃げられない。

　赤い手斧は壊すため、邪魔するものを粉々に。

　手斧に勝てる武器はなし、手斧を阻む壁はなし。

　カランカランと彼は来る、子供をさらいにやって来る。

　今夜はどの子さらおうか、悪い子良い子普通の子。

　子供だったらどなたでも、その手を引いて連れていく。

　連れていかれた子供らは、二度と帰って来やしない。

　どこへ行くのか帰らない、何年待っても帰らない。

　きっと楽しいとこだろと、何も知らない人がいう。

　子供の母親泣きわめき、子供の父親怒り出す。

　その声聞いて彼が来る、きっと子供はまだいるぞ。

　声がする場所目印に、彼は子供を探し出す。

　カランカランと聞こえたら、急いで逃げて千里まで。

　喋らず静かにこっそりと、音が聞こえぬ所まで。

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