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画面の前には ページ10

私のスイッチを入れたのはまだ幼い貴女だった。

 捨てられて動けない私のスイッチを入れ自由にしてくれた。

 もうどこにも行き場のない私に、一緒に居ようと言ってくれた。

 純粋で、優しくて、いつも真っ直ぐ前を向いていた、とても愛しい人。

 そんな貴女は今、年老いて死を迎えようとしている。

 私は貴女と出会ったときと変わらない姿をしているのに、貴女はすっかり変わってしまいましたね。

 もっとずっと一緒に居たかった。私は死ぬことが出来ないので、貴女の後を追うことも叶いません。

 ふと、貴女の呼吸が止まっていることに気がつきました。

 しっかりと握った貴女の手が冷たくなっていく。

 いかないで。おいていかないで。ひとりにしないで。

 結局、最期まで私の画面の向こうを見せることは出来ませんでした。




 私は嘘をついていました。

 愚かで醜い私の中身が貴女にバレてしまうのが怖くてしかたがなかったのです。

 それを知ってしまったら貴女は私を間違いなく捨てていたでしょうから。

 私は前の持ち主だった人間を殺しました。

 すぐに死んでしまわないようにしながら、手足を少しづつ削ぎ落とし、腹を裂き、最後に首を切り落として殺しました。

 その時、私は幸福感に包まれ快楽を得たのです。

 その後、持ち主を殺した私はあのゴミ捨て場に捨てられました。

 そこで貴女に出会ったのです。

 始めは貴女も前の持ち主と同じ目に遭わせてやろうと思っていました。

 その前に十分な信頼関係を築いてから殺そうと考えました。
 
 貴女に優しくしたり、貴女が喜びそうなことをしたり、貴女の好きな物を贈ったりしました。

 料理に毒を盛って、病気になったように見せかけて、手厚く看病したこともありました。

 そうやって信頼させて、いつか殺してやろう。そう思っていたのに私は貴女を殺すことが出来ませんでした。

 貴女を恋をしていると気がついたのは、貴女が19歳になった頃でした。

 貴女を見ているだけで幸せで、ずっとそばに居たいと思いました。貴女の全てが愛しく、大切なものになっていたのです。

 ですが、私は自分が今までしてきたこと、貴女に何をしようとしたか、それらを思い返すと私のこの想いを伝えるなんてことは出来ませんでした。

 貴女が死んだ今、私はこの行き場のない感情を抱えて生きていくしかないのでしょう。

 私は貴女のいない世界で、貴女を想い続けることしかできないのです。

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ワモテ(プロフ) - この独特な世界観が好きです! (2022年6月28日 19時) (レス) @page4 id: d60369b53d (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» やっぱりそうでしたか!ありがとうございます! (2022年4月12日 21時) (レス) id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» 同じお店です。女性はそのお店の店長さんです。 (2022年4月12日 20時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)
切り紙 - 衛生兵079さん» あ、あっ…!上手く言い表せないんですけどもう全部好きです((それで思ったんですけど、この話の女性が開いてるお店って道案内に出てきたおじさんが言っていたのと同じですかね? (2022年4月12日 20時) (レス) @page38 id: 3ea5ee90fc (このIDを非表示/違反報告)
衛生兵079(プロフ) - 切り紙さん» リクエストありがとうございます。風、空ですね、了解しました。 (2022年4月12日 10時) (レス) id: fb9fb2071f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2017年12月25日 23時

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