最弱悪魔は生き残りたい2 (ページ8)

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遊戯 8 ページ8

「あぁ、やっぱり運が悪い」

　クエスチョンが残念そうに言って、左の方に視線を向けた。

　視線の先を見ればそのタイルのすぐ横には緑がかった黒色の、ヘドロって言われて真っ先に思い浮かぶような色の沼のようなものがカラフルな背の高い草に隠れるようにして存在していた。

　次の瞬間、沼から宝石のような物が体にたくさん埋め込まれたパステルカラーのワニらしき生き物が飛び出し、クエスチョンを押し倒した。

「わぁ。ワニだぁ」

　わざとらしいというか、完全に棒読み。

　ワニが大きく口を開けてクエスチョンの左足に噛み付いた。

　離れていてもミシミシという嫌な音が聞こえてくるし、ワニの口の隙間から血が滴っている。

「うわっ」

　思わず声が漏れた。

「あー、思っていたより痛いですね」

　しかし、肝心のクエスチョン本人はさほど焦っていないどころか、少し楽しそうな様子だった。

　どこか他人事のような感じで上半身だけを起こして足に噛みつくワニを眺めている。

　どうなってんだ、あいつは。

　ワニに噛まれて、絶対痛いはずなのに、もしかしたら死ぬかもしれないのにどうしてあんなに落ち着いていられるんだ。

　俺だったらきっとあんな風にしていられない。

　バキッという、さっき聞いたような音がすると同時にワニは口を開きクエスチョンの足を離してゆっくりと後ずさって沼の中へと戻って行く。

　そしてずぶずぶとワニは沼の中に沈んでいき見えなくなった。

「ドグラ見ました？でっかいワニ！」

　楽しそうなその声にワニからクエスチョンに視線を移すと、クエスチョンはタイルの端の方に避けて座っていた。

　その左足は血で赤く染まり、少し歪に曲がっている。骨が折れているのだろう。

「あ、あぁ……」

「次はドグラの番です。頑張ってくださいね」

　何もなかったかのように明るくそう言うのが少し怖い。

「うわ……」

　サイコロを探そうと思った瞬間、パッと目の前に現れたので慌ててキャッチする。

　ゴールに辿り着くか、相手が死ぬか、それ以外にこのゲームが終わる方法はない。

　俺が生きてこのゲームを終えるために、今わかっているのは4は出してはいけない。と言うことだけ。

　1と3、2と2、どちらかの組み合わせが出たらワニに噛まれる。

　確率は低いけど、怖い。

　どうか、頼む。

　悪魔だけど精一杯の祈りを込めて、サイコロを放った。