猫 ページ15
まだ人間だった頃、可愛がっていた猫がいた。
そいつは真っ白な猫で、鳥に襲われて怪我をしていたのを見つけて治療して、兄弟達にばれないようにこっそりと面倒を見ていた。
俺の姿を見つけると嬉しそうに鳴いて、足に体を擦り付けて来たのをよく覚えている。
その時はあまり食べられなくて、いつも食事を残していたので、その残りを隠して持っていって食べさせていた。
それが良くなかった。
残してしまうから元々少なく盛られていて、それでも残してしまうほどだったのに急に全部食べ切るようになったから怪しく思われてしまった。
後をつけられて、存在がはれて……。
ある日、いつものように猫にご飯をやりに行ったら猫が死んでいた。
胴体の真ん中から半分に切られて内臓がこぼれ落ちていて、毛皮が剥ぎ取られて肉がむき出しになっていて、頭はすり潰されて原形はなかった。
それを見た瞬間は何か分からなかったが、近くに落ちた毛皮の毛色と、かろうじて残る体の形であの猫だと気づいてしまった。
吐き気がこみ上げてきて、耐えられなくなってその死体の上に吐いた。
死体はより酷い姿になって、目に焼き付いた。
猫が、あんなに可愛らしかったのがこんなに気味の悪いおぞましい姿になってしまって……。
同じものとは思えなかった。
あの猫はもうそこにいなかった。
いたのはひたすらに気持ちの悪い肉塊で、嫌悪すべきものだった。
死んだらこうなる。
死んだらこんな気持ち悪い肉に変わってしまうんだって、怖かった。
それからだ。
それから俺は「猫」と「死」が嫌いになったんだ。
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P様さん - ドーナツの所可愛すぎてめっちゃ好きです!更新楽しみにしてます……! (2023年4月17日 22時) (レス) @page30 id: 44cbacd699 (このIDを非表示/違反報告)
降臨の颯 - 続編おめでとうございます。これからも応援しています。 (2022年2月25日 21時) (レス) @page4 id: 7248708266 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2022年2月25日 1時