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素顔 2 ページ11

「俺の?」

 モノクロが驚いたように目を見開く。

 モノクロも分かりやすいと思うけど、楽しいとか嫌、というざっくりした感情は分かるけれど何を考えているかまでは分からない。

「私の本当の顔をこんなに見たんだから、教えてくれたっていいじゃないですか。ねぇ、どんなのだったんです? 目の色は? 髪の色は? きれいな顔だった?」

 少し間をおいてから、モノクロがにやりと笑いながら答える。

「目は、そうだな、海みたいに深い青い色だ。それから髪は小麦畑みたいな金色で、それから肌は真っ白で……」

「それ、今くっつけている頭の話じゃないですか」

 青色の目に、金髪。切り落としてきた頭だから血の気が失せて真っ白。全部そのまま今の頭だ。

「……どうだろうな」

 いたずらっぽくモノクロは笑う。

「本当は?」

「正直、思い出したくもないから二度と聞くな」

「そう。では、この話はやめましょうか?」

「そうしろ。……飽きたからもう行ってもいいぞ」

 急に興味がなくなったようにモノクロはふいと目を逸らして、早く出ていくよう手でジェスチャーをした。

 モノクロの気が済んだらしいので、さっさと仮面を取りに行くことにする。

「ねぇ、モノクロ」

「なんだ」

「仮面をつけてきたら、私と遊びませんか?」

「…………少しだけなら、遊んでやってもいい」

「本当ですか!? それなら、えっと、バンカースでもいい?」

 最近遊んでくれなかったから、とても嬉しい。

「それ、時間がかかるか?」

「うーん。少し長いかも」

「じゃあ、もっと短いのを。……花札がいい」

「えぇ、それでも良いですよ。それじゃあすぐ戻って来ますから、待っていてください」

「あぁ」

「やっぱりなしなんて言わないでくださいよ」

「あぁ」

 何度もモノクロを振り返りながら、少しずつこの部屋の出入り口のドアの方へと向かう。

 ドアのところまで着いて、ドアノブに手をかけてまた振り返る。

「すぐ、すぐですからね」

「あぁ」

 モノクロはこちらに背を向けた状態で、適当に答える。

 仮面をつけ忘れたおかげで、今日は良い日になった。
 

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P様さん - ドーナツの所可愛すぎてめっちゃ好きです!更新楽しみにしてます……! (2023年4月17日 22時) (レス) @page30 id: 44cbacd699 (このIDを非表示/違反報告)
降臨の颯 - 続編おめでとうございます。これからも応援しています。 (2022年2月25日 21時) (レス) @page4 id: 7248708266 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2022年2月25日 1時

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