契約 3 ページ5
また一歩、そいつが俺に近づく。
今にも触れそうなほどの距離。微かに柑橘系の香りとそれに混ざって鉄みたいな臭いがそいつからしているのが分かるくらいに近い。
「教えてくれよ、何のために俺を呼んだのか」
「その、俺、死にたくないから、強くなりたくて」
「は?」
そいつは驚いた顔をしたが、すぐに腹を抱えて笑いだした。
「ははは! 本気か? その為に俺を呼び出したのか!? 100位以内に入りたいから、強い奴に力を分けて貰おうとかそういうつもりか?」
「そう、だから、俺に力を分けて100位以内にして欲しいんです!」
「お断りだ」
急に笑うのを止めてそいつは言った。
「え、どうして?」
「簡単さ。お前が100位以内に入れるほど力を分けたら、ギリギリ生き残れない程度に俺の順位が落ちるだろうからな。自分が弱るようなことするわけないだろ」
「そこを、なんとか」
「駄目なもんは駄目だ。何でこの俺が、お前みたいな奴を助けてやらなきゃいけないんだ。弱いのは自分のせいだろ? 他人に頼る前に自分で何とかしろよ」
全くもってその通り。
本当は自分で頑張らなきゃいけないってことはよく分かってる。
でも、弱いから何も出来ない。完全に詰んでる。
だから他人に頼りたい。
「どうにかならないですかね? 俺、その、弱すぎてどうしようもないんだ。人間にも余裕で負けるし、強くなるにはどうしたらいいかも分からないんだ」
何とも言えない微妙な顔でそいつは俺を見る。
「姉ちゃんは自分のことでいっぱいいっぱいだし、頼れるのはあんたしかいないんだ。正直悪魔って何したらいい……」
「おい待て、お前、姉がいるのか?」
俺の話を遮り、そいつが言う。
なんでこいつ姉ちゃんがいることに食いつんたんだ? まさか女好きとか?
「え、いるけど、何?」
「姉ちゃんの名前は何だ?」
「マグラ、だけど……」
そう言った途端、そいつは嬉しそうに笑った。
「マグラか! そうかそうか、お前あいつの弟か。道理でなんか知ってる気がする訳だ。で、マグラはどこにいる? ここにいるのか?」
俺にはもう興味がない、といった感じでスタスタ歩いて部屋を出ていこうとするのを慌てて止める。
「ちょ、ちょっと待って!」
「何だよ、お前に用はないんだよ」
「今姉ちゃんいないよ。1ヶ月前から帰ってきてないんだ」
「じゃあ、どこにいるんだ」
「さぁ? 知らない。何も言ってなかった」
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凪 - ネタ帳からきました。待ってやっぱりモノクロ好っきぃ!!! (2021年12月25日 21時) (レス) id: 7248708266 (このIDを非表示/違反報告)
ふな(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!更新頑張って下さい! (2021年7月24日 20時) (レス) id: eed263cb5f (このIDを非表示/違反報告)
Cry cry - 続きが楽しみです。がんばりんごー! (2021年6月22日 16時) (レス) id: 72089608d6 (このIDを非表示/違反報告)
ソウルズ(カービィ)LOVE(プロフ) - ワーッ!(?)どうも!はじめまして!読ませて頂きましたが、すんごく面白いです!頑張って下さい!応援してます! (2021年6月18日 21時) (レス) id: 604407214b (このIDを非表示/違反報告)
まきぴろん(プロフ) - 遅れてごめんなさい(汗)完成しました!!ありがとうございました。 (2021年1月4日 12時) (レス) id: 24af0dff4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2020年11月2日 14時