最弱悪魔は生き残りたい

契約 1 ページ3

まず始めに1つ。俺は馬鹿だ。

　これでいけると思ってしまった少し前の自分を思いっきり殴り飛ばしてやりたい。

　今すぐ止めておけと、そんなことをするくらいなら自分で順位を上げる努力をしろと、そう言ってやりたい。

　まぁ、言われても同じことをしただろうけど。

　100位以下の悪魔は2年後に死ぬとか急に言われて、焦ってたっていうのもあったと思う。

　2年ってのは本当にすぐ過ぎてしまう。だからすごく焦ってた。

　1人じゃどうしようもないくらいに俺は弱い。順位だって一番下、最下位の666位だ。

　弱すぎて人間にも余裕で負けるし、出来ることだってとんでもなくショボいのにやるとすごい疲れる。

　だから人間と契約とか、殺したりとかそういう悪魔らしい経験は何一つとしてないどころかやり方すら知らない。

　正直これでよく今日まで生きてこれたなと自分でも思う。

　普段なら頼れる姉は今、自分のことでいっぱいいっぱいで頼ろうにも頼れない。

　だから俺は考えた。

　薄暗い部屋の床に書かれた魔方陣、それから色々な魔術的なアイテムを、生贄には山羊と生まれたばかりの赤ん坊を。あの手紙が届いてから全部1ヵ月かけて用意した。

　特に山羊と赤ん坊は苦労した。山羊にははね飛ばされ、赤ん坊の母親には半殺しにされた。それでも頑張って持ってきた。

　より強い悪魔を召喚するためには必要なことだと、古本屋で買ってきた人間の魔導書には書かれていたから。

　まさか悪魔が悪魔を召喚しようとしているなんて。

　弱い俺が生き残るためには急につけられた順位の50位以上くらいの強さの悪魔に頼るしかないと考えた。

　召喚した悪魔にお願いすることは１つ。俺を強くして100位以内に入らせて、生き残らせてください。

　最悪、断られて殺されるかもしれないがそのための対策はちゃんとしたつもりだった。

　そもそも魔方陣ってのは召喚した悪魔から術者を守るためのものでもあるしなんとかなるだろうと思ってしまった自分が本当に馬鹿だった。

　結果を言えば、召喚は成功した。

　しかし現在、召喚した悪魔は余裕で魔方陣から出て来て俺のすぐ前まで来ている。

　失敗した。それともこいつがとんでもなく強いのか、いや、自分が弱すぎただけかもしれない。

　すごく嫌な感じがして、冷や汗がだらだらと出てくる。

「よう、人間。で、俺に何の用だ？」

　ノイズ混じりの声でそう言って、目の前の白黒のスーツを着たモニター頭の悪魔はニヤリと笑った。

契約 2→←悪魔 ドグラ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す