病気とは言わないで

あぁ、神様　６ ページ11

見ないようにしていても、ついナイフが刺さっていたはずの場所に目がいってしまう。本当は見たくないのに、見ない方がいいはずなのに。

「本当に、死なないんですね……」

「えぇ、ホントにホント。死ねないのよ」

　倒れたときに一緒に倒した椅子を元に戻しながら、元気に彼女は話始めた。

「どうして、そんな病気に……。こんなことって、本当だったら、夢じゃなきゃ、あり得ない、はずなのに……」

「どうしてって言われても……、神様の悪戯なのかもね」

「神様？」

　アリスさんはまた、ふわりと微笑む。

「あぁ、神様は残酷よ。死を望む私には強制的な生を、心優しい子には暴力を、気弱な子には他人や自分自身さえも傷つける力を、あの子はいつまでたっても満たされないし、あの子は夢を見る喜びすらも奪われてしまったわ」

「一体何を……」

「でもきっと、これは神様にとって悪戯でしかないのね……」

　アリスさんはどこか様子がおかしかった。

「あの、大丈夫、ですか？」

「大丈夫よ。神様はきっと、許してくれるわ。きっと、私を殺すのは……」

「アリスさん？」

「アリス。しっかりしてください」

　突然、食堂の入り口の方から知らない人の声が聞こえた。そちらを見ると、両腕を拘束された背の高い男の人が立っていた。

「アリス」

「……あぁ、ロウ。今日は遅かったのね」



　
　




　

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