6*願望(のぞみ) ページ8
時間は流れ、深夜。
蝙蝠(コウモリ)が飛び、木々が騒めく、夜の世界。
この国には、未だ吸血鬼などの「夜の種族」と呼ばれる存在が居る。
そうでなくとも、夜の街には不埒な輩がいるため、外を出歩くことはよくないとされている。
そんな世界の中、枯れ木の大きな枝の上に立つ、小柄な影がひとつ。
美しい銀色の髪の毛は、大きな満月に照らされ蒼く染まり、光っている。
彼の顔は、もとよりの美しさと月の光が合わさり、どこか妖しささえ纏っていた。
『…僕は…君を…』
彼が何をつぶやいたのか。
それを知る者は、彼以外にはひとりもいなかった。
月は、彼を嘲笑うかのように、ゆっくりと動いてゆく。
*
「女王様、こちらにも書類が溜まっております。なるべく早めにお願いしますね」
「…わかっている。しかし、妾も疲労している。少し、休ませてくれぬか?」
「わかりました。失礼します」
側近との会話を終え、枕へ顔を埋める。
柔らかな枕とベッドは、いつもならすぐに眠気を誘うけど、今日は目が冴え切っていた。
「…。」
横を見ると、本来私が着るべきドレスがマネキンに着せられている。
いくつもの髪飾りやネックレスなどが小物入れから溢れ、床に落ちている。
もともと、派手な服装はとても苦手なんだ。
私は自分の容姿に自信がない。
むしろコンプレックスと言っても過言ではないだろう。
肩や胸、腕を露出する服を着たって、誰のためになるんだろう。
そんな思考がぐるぐると脳みその中をかき回し、結局いつもの少しレースがついた、シンプルで可愛らしいブラウスと、端に控えめにリボンのついたタイトスカートになる。
…髪の毛はプライドからか綺麗に編み込んで結ってるけど。
本当は、おしゃれだってしたい。
いや、ドレスとかの派手なものではなく…
言ってしまおう。
私は、普通の女の子みたいな暮らしがしたいんだ。
こんな仕事に追われない、自由な生活。
人は言う。
「あなたこそ一番自由なのでは?」
そんなわけがない。
ここは鳥かごみたいなんだ。
そして私は小鳥から成鳥になり、逃げないように翼を切られた鳥。
私には、自由はない。
子供の頃はよく外で遊んだ。
でもその遊び相手も、今では私の部下。
嫌だよ。
前みたいに笑顔で、自然な言葉で話してよ。
でも、いくら願ったって私の手にはつかめない。
だから、せめて。
あなただけでも。
望ませてよ――――――――。
ラッキーカラー
あずきいろ
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夜月(プロフ) - P(リン)さん» 元影猫です。そうでしたか。殿堂入りされた今では、何とも言えませんが……………お答えありがとうございます。 (2014年8月20日 8時) (レス) id: 4e87b81b48 (このIDを非表示/違反報告)
P(リン)(プロフ) - 影猫さん» 私は好評価のみ受け付けているつもりはありませんよ?そして、申し訳ありませんが私自身このサイトのシステムは理解しきっておりません。なので影猫さんの質問には答えかねます。本当に申し訳ありません。 (2014年8月18日 14時) (レス) id: e39482bc43 (このIDを非表示/違反報告)
影猫(プロフ) - 質問です。何故サクシャサマは『好評価のみ』受け付けておられるのですか?私が評価をしたときは、95名の方が評価しておられたようですが……………このサイトのシステムは、100名ではありませんでしたか? (2014年8月17日 20時) (レス) id: 4e87b81b48 (このIDを非表示/違反報告)
P(リン)(プロフ) - kum.Aliさん» 応援ありがとうございます!とても励みになります。拙い文章ですが、頑張ります! (2014年3月27日 19時) (レス) id: c342c49956 (このIDを非表示/違反報告)
kum.Ali(プロフ) - ファンタジーって素敵ですよね!あ、いきなりすみません。読んでて文章構成もストーリ性も素敵だなぁっと思ってついコメントを…。羨ましい限りです! 応援してます。これからも更新頑張って下さい^o^ (2014年3月25日 9時) (レス) id: 058c904860 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:P(リン) | 作成日時:2013年11月2日 22時